やがて来たる者へのレビュー・感想・評価
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不条理の中の希望
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少しだけ歴史を知っていたい。ドイツとイタリアとでは第二次世界大戦に対する自国の歴史認識が異なる。イタリアはムッソリーニ率いるファシスト党がドイツと同盟を組んでいたが、国内において1943年頃には既に反ファシスト勢力(パルチザン)が出現していた。両国の同盟関係はイタリアの各地で形骸化していたのである。主人公の少女マルティーナはそんなイタリアの自然豊かな一地方に暮らしている。弟の死というショックを契機に喋れなくなったものの、卓越した観察力で大人の世界を見つめながら育った。1944年「マルザボットの虐殺」として知られるドイツ兵による一般人の殺害が起こる。かつて不可抗力によって弟を亡くしたマルティーナは、今度はナチスドイツという人為的な理由によって家族のみならず共同体までも失ってしまう。生まれたばかりの弟を抱きかかえて文字通り懸命に生きるとき、マルティーナは言葉を取り戻す。2011年3.11以降、日本が経験したことと映画の構造とは驚くほどに類似する。主人公が意味のある言葉を取り戻して「やがて来たる者」すなわち未来に生きる者に何を語ることが出来るか。68年前のイタリアで起こったことは、形を変えて現在の日本において進行中である。
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