「アクションとしても、見応えたっぷりなのに、さらにラブロマンスと「タウン」で培われてきた、そこに暮らす人々の明と暗が絶命に融合された傑作でした。」ザ・タウン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
アクションとしても、見応えたっぷりなのに、さらにラブロマンスと「タウン」で培われてきた、そこに暮らす人々の明と暗が絶命に融合された傑作でした。
派手な銀行強盗とその後のカーチェイス。アクションとしても、見応えたっぷりなのに、さらにラブロマンスと「タウン」で培われてきた、そこに暮らす人々の明と暗が絶命に融合された傑作でした。
まず、銀行強盗のリーダーと襲われて人質になった銀行の支店長が再開し、恋に落ちるなんて突拍子もないストーリーで、あり得ないだろうと思っていました。
但し当然強盗団は、覆面をしていて顔は分かりません。ただそれだけでは、いきなり恋に落ちることはなかったでしょう。
ふたりをつなぐものとして、同じ「タウン」で暮らすものという共通項が、スパイスとして効いているようです。
ボストン北東部チャールズタウンというのは、そこで暮らす人々にとって離れがたいソウル・タウンとなっていたのでした。登場人物が口々に語る「タウン」への愛着を聞くにつけて、この町に観客も、エモーショナルな感傷に浸ってゆくことでしょう。
またコインロッカーでのさりげない出会いというのも好感が持てました。このシーンだけ見たら、とてもこれがハードな銀行強盗団の物語とは思えないさりげなさなんです。
そして、ダグの魅力です。強盗団のリーダーとは思えない、ハンサムで優しさをたたえた表情。実は、彼には幼い頃に母親と離別したという悲しみを背負って生きてきたのです。その悲しみが、優しさとなって滲み出ていました。
強盗団の人質になって傷心のクレアは、タグの目の前で、立ちくらみ、自分の感じている恐怖心を告白します。クレアの苦しむ姿に、心を痛めているタグの申し訳なさそうな表情がいいのですね。クレアにとってまさか目の前の優しい人が、自分を誘拐した張本人とは、思えません。やがてストーリーは、二人がやがて恋に落ちていく過程を、丁寧に描いていていきます。同時にドキドキさせられたのは、いつクレアがダグの正体を見抜くかということです。強盗シーンよりも、緊張しました。何しろ、ダグの仲間のひとりが言い寄ったとき、そいつの首に彫り込まれたタトゥーンを強盗時にクレアは見て、はっきりと覚えていたのです。バレるぞ、バレるぞと、ハラハラさせる演出は、なかなか憎いところです。
話は変わって、彼らの仕事ぶり。
この町で暮らす人は、代々銀行強盗に関わってきて、普通にサラリーマンをしながら、街の元締めの指令があったときは、チームを作って「仕事」をするスタイル。
強盗のノウハウや強盗後のマネーロンダリングまでが、役割分担されて、代々の子孫に伝承されていくシステムが強固にできあがっていたのです。
なかでもダグのチームはプロ中のプロ。『パブリック・エネミーズ』でデリンジャーは派手にマシンガンをぶちかまし、強行突破をするのが常套手段でしたが、ダグたちの犯行はスマート。電話会社勤務の仲間を持ち、警報システムを破壊してから、静かに潜入して、証拠となるもの全てを隠滅して引き上げるのです。手際の良さは、鮮やかというほかにありません。万が一、警察に追われても、要所に代替えの車を用意して乗り換えることで、追っ手を振り切ってしまいます。
このカーチェイスは車を片っ端からクラッシュしていく、ど派手なシーンの連続です。最近見たアクション映画と比べてもトップクラスの迫力でした。
しかし彼らを追い掛けるFBIもバカではありません。
警報システムから管理する電話会社に目をつけて、強盗のあるたびに欠勤する社員がいることに気がつきます。そこから、その社員と親しいダグのチームを容疑者一味と推定したのでした。
一方、クレアの通信記録から、ダグと交友関係にあることを突き止めたFBIは、一味の写真をもってクリアの元に。
ダグの正体を知ったときは、既に既に肉体関係を持った後でした。騙されたと怒りながらも、全てを打ち明けるというダグを結局受け入れてしまうのは、女心いうものでしょうか。一緒に逃亡して暮らすことを誓い合うのですね。
さてさてドラマは佳境に入ります。
ダグは、街を出てクレアと暮らすことを決断したものの、「タウン」の闇のシステムはそれを許しません。なんと、クリアまで巻き添えにすると脅して、次の危険な仕事に就くように強要します。その時語られる母親の失踪の真相は、つくづく「タウン」の絆が、自分の人生にとっていい面ばかりでなく、呪いをかけてきた影の部分をタグは思い知るのでした。
脅しに屈し、最後と決めた仕事に向かうタグ。しかし、計画は失敗し、犯行現場はFBIに囲まれてしまいます。絶体絶命のなか、どう脱出するのかが一つの見せ場でした。
ここまでネタバレするのはは忍びないのですが、危機を乗り越え、タグはクレアに電話するとうちに来てと彼女は語りました。しかし近所にいたタグの目には、はっきりそのすぐそばに捜査官が寄り添っていたのが見えたのです。
果たしてクレアは、タグを裏切って司法取引に応じてしまったのでしょうか。それとも?
ああ、これぞ映画と大満足した結末は、ぜひ劇場でご覧ください。