劇場公開日 2011年2月5日

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「故郷(過去)を捨てるのは難しい」ザ・タウン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5故郷(過去)を捨てるのは難しい

2011年2月13日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

前作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』が絶賛された
ベン・アフレック監督の監督第2作。
前作はその年の私的ベスト10に入るくらいに大好きな映画だが、
今作もサスペンスアクションとドラマをうまく両立させた良作だった……

けれども「よく出来てるな」と思う映画と
「面白いな」と思う映画は必ずしもイコールでは無い訳で。
なんだろ、今ひとつ気分が乗らないとゆーか、釈然としないとゆーか。

“タウン”に縛られた女クリスタを演じるB・ライブリー
(やさぐれた感じが良い)、
優しい顔して残虐な“花屋”P・ポスルスウェイト
(先日逝去。素敵な役者さんでした……合掌)、
そして主人公の父親を演じるC・クーパー。
サブキャラは皆、抜群の存在感なのだが……
主要な登場人物らが今ひとつに思える。

“タウン”を抜け出そうともがく主人公だが、
「生き方を変えたい」という彼の願いが何故か心に迫ってこない。
きっとヒロインとの関係を描き過ぎて、
故郷に抱く愛憎の念が弱く感じられたせいかもしれない。
彼は単なる生き地獄を去る訳じゃない。
慣れ親しみ、思い出の詰まった故郷を去るのだ。
なのに「離れたい」という描写が強過ぎて、
慕情の念はあまり伝わらない。

そして、見事な演技を見せながらも残念なのは、J・レナー演じるジェム。
“タウン”の生き方・絆を誰より重んじ、
狂信者のように危険極まりない人物である彼は、
確かにサスペンス要素として機能してはいるのだが、
主人公と共に人生を生き抜いてきた兄弟のような絆=
人生を変えたいと願う主人公にとっての大きな“しがらみ”
という側面は終盤になるまで殆んど描かれない。
そして妹同様、“タウン者”としてしか生きられない、
哀れな男としての側面も。
それらが全編でバランスよく描かれていれば、彼の最後の姿に
もっと心を動かされていたかもしれない。

だがサスペンスアクションとしての演出はかなりの高レベル。
見事なまでに計算された手際に唸る冒頭の強奪シーンや、
警官隊の包囲網をかいくぐりながらのクライマックスの銃撃戦など、
アクションシーンはどれもよく練られている。
なかでも物語後半のカーチェイスは手に汗握る迫力だ。
車一台通るのがやっとの街路を逃げまくる前半と、
混雑した大通りを猛烈な勢いで疾走する後半。
かなりハラハラします。

以上!
ちょっと厳しめだが3.5判定で。

<2011/2/5観賞>

浮遊きびなご