劇場公開日 2011年2月5日

  • 予告編を見る

「久々アメリカ映画の粋」ザ・タウン grassryuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5久々アメリカ映画の粋

2011年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

興奮

タイトルがとてもダサく感じられて(英字タイトルをそのままカタカナ表現にする必然性はなく、完全なミスマッチだと思います)、かねてからやや知的なシュワルツネッガーっぽく思っていた(おバカにみているシュワルツネッガーの評価についてはプロフィールご覧くだされば幸いです)ベン・アフラック、…さてどうしたもんかなと思っていたけど、結構評判高そうなんで、レイトショウでけちって探りいれてみたんですが…。はっきり5倍ぐらい楽しめました。

久々の古式ゆかしきアメリカン・ピカレスク、僕らとっつぁん世代には懐かしいというかあまりに鮮烈すぎた70年代数々の名作、がよぎっては消えよぎっては消え。ベン自体とてもこの世界が好きなのでしょう、随所に名作のコピーや戯画がフィルインされていてオールドファンには思わず苦笑い(ニッコリ?)、でも全然変じゃない!
ピカレスクの美しさは、スタイルを変え、時代を違え、役者をすり替えても、不変なのだってことを思いしらされました。ベンの熱中度、シュワルツネッガーを彷彿とさせる偏執狂さ、がいかんなく発揮され、ベンとレベッカ・ホールがお互いの境遇を語らうシーンなど、まさにボニー&クライドの冒頭そのもの…。

僕よりはるか若い論者のみなさんからは、「読める」とか「ストーリーにひねりがない」という感想が多いの、よくわかります。70年代ピカレスクの洗礼を受けるでもなく、突如として出現した「セブン」とか「ブロウ」などの悪逆非道ぶりに触発された若い世代には物足りなさを感じるであろう、シンプルなストーリー。

が、そのシンプルさゆえに、何気ないセリフの端々やちょっとしたしぐさにこめられた深い真理の断片が徐々に効果を表し、ラスト辺りにくるとピタッと1つにつながってきれいに整理され、エンドロールまでもがしっかりと作品の一部に組み込まれています。ベンを始めとした俳優陣はみな個性的でかっこよく、アクションもカーチェイスもずば抜けてすばらしい、ストーリーはシンプルながら動きは速くダイナミック。
そして何よりこの映画のクオリティを一段と高めたのは、やはり一連のピカレスク同様に優れた助演、レベッカその人によるところが大だろうと思います。
ストーリー中のポイントポイントで発揮された彼女の巧みで繊細な表現によって、場面のつながりに無理がなくなるとともに、展開がギュッと引き締まりました。

シンプルな仕立ての中に随所にちりばめられたエスプリやアクセントの数々、それを大ナタ奮ってまとめあげた構成力、悪いことをやってる人たちの悪いことをやってることの裏側にある真理の提示とその破綻…。
久々にアメリカ映画の良さ、すばらしさを、心から満喫できた一本でした。

grassryu