インシテミル 7日間のデス・ゲーム : インタビュー
10人の中でも、須和名は特にミステリアスだ。ゲームに参加した動機も判然とせず、死体を見ても動揺を見せない。結城にほのかな思いを寄せるような、意味深なしぐさもある。
「ナゾですよね(笑)。実は彼氏がいて、事故で亡くなってといった裏設定をつくっていました。彼女自身、進んでやりたかったわけじゃないけれど、残酷な部分も冷静に見ている感じ。ちょっとマフィア的なのかなあ」
マフィアと言われても素直に同意はできないが、これが綾瀬流の感性なのだろうと妙に納得。そんな彼女が、窮地に立たされた結城を救うため拳銃を構えるシーンで、唯一、感情を表に出す。
「『撃ちますよ』って言うんですけれど、体中から殺気が出ているような感じと言われ、そこは大変でした。見てもらいたいシーン? そうでもないです」
あら? ならば、どこがオススメ?
「ラストですね。監督がクランクイン前からこだわっていて、セリフはないんですけれど、須和名さんの本質がチラッと見えるような、本当に微妙な表情。言葉がないから伝わりにくかもしれないけれど、一瞬のカットなのでそこは見てもらいたいですね」
ネタばれになるので詳述は避けるが、確かにこのときの綾瀬の表情は、「7日間のデス・ゲーム」の意義を象徴している。
女優としてより良い作品づくりに専念したという綾瀬。それだけに、撮影終了時には相当な手応えを感じたのではと思いきや、「けっこう不安のほうが多かったかなあ」と振り返る。
「そういう(ナゾが多い)役だったので、10人の中で自分がどう映っているのかなあって。でも、監督が妥協をしたカットはないと言っていたので、そういう意味ではOKが出たカットでつながれているので、納得しています。監督は言葉とか技術ではない、そこに懸ける空気感を大事にするので、私もこれからそういうところを大事にしていきたいと、すごく思いました」
中田監督との出会いによって、またひとつ大きな財産を得たことをうかがわせる、満足げな笑顔がはじけた。今後もさらに演技の幅を広げようと、どん欲な姿勢も見せる。ヒロインを演じたドラマ「白夜行」(2006)の原作者・東野圭吾作品が大好きで、08年の主演映画「ICHI」で経験した殺陣にも再挑戦したいなど、興味は尽きない。
ちなみに、綾瀬本人が映画と同じアルバイトがあったとしたら、「やらないです。怪しいと思う」ときっぱり即答。では、時給11万2000円をもらえるとしたら何をやる?
「引っ越しって、けっこう高いって言いません? 力仕事だったらやるかもしれない。旅館の床ふきやシーツ交換とか全部を大掃除みたいな。そういうのならいいかも。あと料理……最後の盛り付けとか。もちろん、やらせてもらえるなら、料理もですよ」
間違いなくそれほどの高額にはならないだろうが、余談的な問いかけにも真剣に考えて答え、周囲を笑いで包んでしまう。こんな飾らないところも、綾瀬流である。