ツーリストのレビュー・感想・評価
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【70.0】ツーリスト 映画レビュー
作品の完成度
本作は、サスペンス、ミステリー、ロマンス、コメディといった複数のジャンルを混ぜ合わせようとした意欲作だが、その結果として、どのジャンルにも深く踏み込めていないという印象が強い。特に、サスペンスの緊張感とコメディの軽妙さという、相反する要素のバランスが取れていない点が最大の弱点。ヴェネツィアの美しい風景を背景に繰り広げられる逃走劇は、時にのんびりとした観光案内にも見え、観客をハラハラさせるには至らない。これは、監督フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクが、自身の持ち味である硬質なドラマ演出を、ハリウッド的な娯楽作に持ち込もうとした結果、消化不良を起こしたとも言える。全体として、豪華なキャストとロケーション、そしてスタイリッシュな映像美は目を引くものの、物語の核心であるはずのミステリーが序盤から予測可能で、意外性に欠ける。その結末も、観客の期待を裏切るサプライズというよりは、肩透かしの感が否めない。総合的に見て、**「豪華な観光ビデオ」**のような外見に、練り込み不足のストーリーを被せたような、惜しい完成度と言わざるを得ない。
監督・演出・編集
監督はフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。彼の代表作である『善き人のためのソナタ』(2006)では、旧東ドイツの監視社会という重厚なテーマを、緊迫感あふれる演出で描き切った。しかし、本作ではその手腕が存分に発揮されたとは言い難い。ヴェネツィアのゴンドラや運河、歴史的建造物を効果的に見せることに終始し、肝心のスリラーとしての演出は甘い。特に、アクションシーンの緊迫感のなさや、登場人物の心理描写の浅さが目につく。編集も、シーンの切り替わりがやや唐突で、物語のテンポを損なっている部分がある。しかし、美しいロケーションを最大限に生かすという点では成功しており、その映像の詩的な美しさは評価に値する。
キャスティング・役者の演技
1. アンジェリーナ・ジョリー (エリーズ・クリフトン)
エレガントでミステリアスな美女、エリーズを演じたアンジェリーナ・ジョリー。その圧倒的なオーラと美貌は、作品の世界観を牽引する。特に、パリのカフェで手紙を読むシーンや、列車の中でフランクを誘惑するシーンなど、彼女の一挙手一投足が絵になる。しかし、彼女の演技はあくまで**「美しくミステリアスな女性」という型にはまったもの**に留まり、役柄の内面の葛藤や深みまでは描き切れていない。彼女の演技力をもってすれば、もっと複雑なキャラクターにできたはずだが、脚本の制約か、あるいは監督の演出方針か、そのポテンシャルは十分に発揮されたとは言い難い。
2. ジョニー・デップ (フランク・トゥーペロ)
冴えないアメリカ人数学教師、フランクを演じたジョニー・デップ。これまでの奇抜なキャラクターとは一線を画す、ごく普通の男を演じている。しかし、その「普通さ」が、彼が持つ独特のカリスマ性やコメディセンスと、どこか噛み合っていない。**彼が演じるフランクの「間抜けさ」**は、物語の軽妙さを生み出す一方で、観客に彼の正体を見抜かせてしまうという、サスペンスとしては致命的な結果を招いている。ジョニー・デップの演技そのものは安定しているものの、この役柄が彼の魅力を最大限に引き出しているかといえば、疑問が残る。彼の出演は作品の商業的成功に貢献したが、演技の観点からは、彼をミスキャストと捉える向きもある。
3. ポール・ベタニー (ジョン・アチソン警部)
執拗にエリーズとアレクサンダーを追うロンドン警視庁の刑事、アチソン警部を演じたポール・ベタニー。彼はこの作品において、数少ないサスペンス要素を担う存在。その冷徹な眼差しと、静かながらも執念を感じさせる演技は、物語に一定の緊張感をもたらす。主人公たちのロマンスとは対照的な、プロフェッショナルな捜査官の姿を堅実に演じ切っており、作品のバランスを保つ上で重要な役割を果たしている。
4. ティモシー・ダルトン (ジョーンズ主任警視)
アチソン警部の上司であるジョーンズ主任警視を演じたティモシー・ダルトン。かつて『007』シリーズでジェームズ・ボンドを演じた彼が、今回は権威的な上司として登場。短い出演時間ながらも、その存在感は際立っている。アチソン警部とのやりとりの中で、事件の全体像を観客に提示する役割を担っており、ベテランならではの重厚な演技で物語に深みを与えている。
5. スティーヴン・バーコフ (レジナルド・ショー)
アレクサンダーに金を盗まれたロシアンマフィアのボス、レジナルド・ショーを演じたスティーヴン・バーコフ。冷酷かつ非情なキャラクターを説得力のある演技で表現しており、フランクを追いつめる役割を担っている。彼の登場によって、フランクが直面する危険がより明確になる。
脚本・ストーリー
2005年のフランス映画**『アントニー・ジマー』のリメイクである。この脚本は、そのオリジナルをハリウッド的にスケールアップさせたものだが、その過程で、オリジナルが持っていた「偶然の出会い」がもたらすミステリーとロマンス」という繊細な要素が失われた感がある。フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクが共同で脚本を手掛けているものの、クリストファー・マッカリーとジュリアン・フェロウズという、まったく異なるタイプの脚本家が加わったことで、方向性が定まらなかった可能性がある。物語のひねりである「フランクの正体」は、観客の多くが早々に気づいてしまうため、最後のサプライズとして機能せず、ストーリー全体の緊張感を削いでいる。全体的に、プロットは観光客を主役に据えた軽快なミステリー**を目指しているが、深みのある人間ドラマにはなっていない。
映像・美術・衣装
ヴェネツィアの絵画のように美しい風景をこれでもかとばかりに映し出す映像は、本作の最大の魅力。ゴンドラが水面を滑る様子や、歴史的建造物の荘厳さが、ジョン・シールによる撮影で余すところなく捉えられている。美術も同様に、ホテル・ダニエリの豪華なスイートルームや、ヴェネツィアの路地裏など、細部にわたって作り込まれており、観客を魅惑的な世界へと誘う。アンジェリーナ・ジョリーが着用する衣装は、エレガントで洗練されており、彼女の美しさを際立たせている。全体として、視覚的な要素は極めて高い完成度を誇っており、作品の最大の功績と言える。
音楽
ジェームズ・ニュートン・ハワードが手掛けた音楽は、ロマンチックな旋律と、サスペンスを煽る不穏な音色を巧みに使い分け、物語の雰囲気を盛り上げている。特に、フランクとエリーズのロマンスを彩る優雅なテーマ曲は印象的。主題歌には、イギリスのロックバンド、**ミューズの『スターライト』**が使用されており、映画全体のスタイリッシュな雰囲気をさらに高めている。
受賞・ノミネート
本作は、評論家からは概して酷評されたにもかかわらず、意外な形で評価された。第68回ゴールデングローブ賞では、ミュージカル・コメディ部門において、作品賞、主演男優賞(ジョニー・デップ)、主演女優賞(アンジェリーナ・ジョリー)の3部門でノミネートされた。しかし、これはロマンティック・スリラーである本作を「ミュージカル・コメディ」に分類したことが、一部で物議を醸し、ハリウッド外国人記者協会の品位を問う声も上がった。結果として、いずれの賞も受賞には至らなかった。
作品 The Tourist
監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 98×0.715 70.0
編集
主演 アンジェリーナ・ジョリーB8×2
助演 ジョニー・デップ B8×2
脚本・ストーリー オリジナル脚本
ジェローム・サル
脚本
フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
ジュリアン・フェロウズ
クリストファー・マッカリー B6×7
撮影・映像 ジョン・シール
B8
美術・衣装 ジョン・ハットマン B8
音楽 B8
壮大な鬼ごっこ、
オチがいい
長いって
その問題は解決できる
2023 25本目
ゆっくりと優雅な時間を楽しめる素敵な映画です。
ラブサスペンスのような映画です。
景色が綺麗なパリやベネチアが舞台なので、旅行気分も味わえちゃいます。
アンジェリーナ・ジョリーと、ジョニー・デップの二人の駆け引きが興味深い感じがします。
ラストシーンは、ちょっとしたサプライズと感動的なハッピーエンドです。
展開とかハラハラするけどちょっと盛り上がりに欠けていた感があった。...
全員アホ
とりま、物語の導入部分長いな。事が起こるまで40分くらいあるし。最も、それを超えてからが、ホントの地獄やったけど。
とりあえず、筋が滅茶苦茶。特に警察のアホさがヒドイ。主人公が「銃持った男に追われてる」のに助けなかったり、現場に民間人連れてきて、それに逃げられたり、現場から全員いなくなったり~等々、挙げだせばキリないし。
オチもよくあるヤツ。ただ、そこに至る「主人公の行動・顛末」は、ほぼほぼ「運任せ」で、ラストとそれまでが食い違い過ぎかな。後、マフィアのボスによる、ミスした部下の人事処分。極悪人演出のための、よくあるシーンやけど、あの程度のミスで一発処刑て、どないやねん。
登場人物が全員アホで、全編「それはないわ」の連続。ご都合主義やり過ぎで、何が起きても、何の驚きもない映画。
ドナースマルク監督だから見てみた!
最初は冴えない数学教師のフランクが、だんだんかっこよくなっていった。ジョニー・デップは濃いメイクなしでも素晴らしい!
ヴェネツィアの最高級ホテルは、ダニエリかアマンか。覚えた!
コロナになって、ヴェネツィアの水が澄んで綺麗になって良かった。ヴェネツィアの住民もツーリストが居なくなってほっとしているでしょう。でも、観光業に大きく依存している街だから大変だろうなあ。私も一人のツーリストとして、また行ってみたい。
追記
この映画はリボンがポイントで可愛い!アンジェリーナ登場時のベージュ・ドレスのウエストには赤いバック🎀、とてもキュートでしたね、Kさん!そして、ヴェネツィアのホテル・ダニエリの客室では、彼女用のクローゼットの扉の取っ手のところにベージュのリボン!解いたら中には、素敵でゴージャスなドレスにアクセサリーに靴!もう、たまらないです!サイズも趣味もぴったり!🎀にはいつもワクワク!
【”ごく普通の男”と”普通でない美女”とのスリリングでゴージャスな騙し合いラブストーリー。ジョニー・デップは今作の様な、素顔の役が素敵だと思うなあ・・。】
◆アレクサンダー・ピアースと言う、ロンドン警視庁が追っている国際指名手配の金融犯罪者の恋人、エリーズ(アンジェリーナ・ジョリー)。
彼女を監視する、ロンドン警視庁アチソン警部(ポール・ペタニー)達。
ピアースが消えて、2年経ち、漸くエリーズに手紙が届き、カフェで一読した彼女は直ぐに燃やして店を出る。
アチソン警部は、パリ警察に手紙の燃えカスに化学処理を施させ解読。「8時22分」「リヨン駅」と言う文字を発見する。アチソンは上司ジョーンズ主任警部の「整形手術をしたピアースを逮捕する可能性も予算もない」と言う通告を無視し、エリーズ追跡を開始する。
手紙は、ピアーズからのもので、
”会って、全てを話したい。。8時22分、リヨン駅からヴェネチィア行の列車に乗り、『僕の体格に似た男を選んで、そいつを僕だと思わせるんだ。』愛している。”
と書かれていた・・。
指示通り、列車に乗ったエリーズは指示通り、一人の男の前に座る。男は、アメリカから来たツーリスト、フランク・トゥーベロ(ジョニー・デップ)。3年前に妻を亡くした数学者だった・・。
■今作の魅力
・ヴェネチィアを舞台にした、ゴージャスなアンジェリーナ・ジョリーやジョニー・デップ達の衣装、意匠。
・プロットも、ナカナカ良い。
・徐々にお互いに惹かれていくエリーズと、フランク。
・ロシアのマフィアも絡んできて・・。
<粋で、おしゃれなロマンティック・サスペンス。二転三転する展開に楽しく、翻弄されよう。>
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