アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたちのレビュー・感想・評価
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伝説の旋律。
アルゼンチンタンゴ、と聞いて思い浮かぶのは
「ラ・クンパルシータ」くらいしかない私であるが^^;
何だろう…やや哀愁と気合に満ちたそのメロディは
日本人向け、というか聞いていて心地良いなと思う。
今作はタンゴ版の「ブエナビスタ・ソシアルクラブ」
という感じで、確かによく似ている。
それほどタンゴに造詣が深くなくても聴けると思う。
登場するのは全て若手でなく^^;マエストロ…だから
まぁ、じいちゃんばあちゃんたちなんだけど。
さすがに年代を重ねてきただけあって、多少枯れても
味わいは深い。懐かしいスタッフ仲間と語り合いながら
スタジオでアルバムレコーディングする風景と、
コロン劇場でのステージが今作のメインとなる。
もちろん彼らを知っていればなおさら…^^;だろうが、
まったく知らない私にとっては、モノクロで流れる
彼らの古いステージ演奏や、その音がかなり見事で、
いかに伝説のマエストロなんだなぁというのが伝わる。
日本でいえば、にっぽんの歌とか、NHK歌謡コンサート
に登場する国宝級の(誉めあげてます)歌い手さんたち、
それはやはり「演歌」ということになるんでしょうかね。
何年、何十年経っても、歌い継がれていくような…
バンドネオンの音色が好きなので、その演奏と、
ステージで後半(すいません名前覚えてないんだけど)
ソロで歌ったおじいちゃん、あ、^^;マエストロの歌が
すごく良かった。自分の元を去っていった妻?に対する
嘆き。を歌っているんだけど、愚痴るのかと思いきや、
そんなお前を好きになってちっとも後悔していないよ♪
と結んでいる。なんと広い心の持ち主!おぉタンゴよ。
2006年の収録なので、すでに亡くなられた人が多い。
しかし最後にこんなステージを踏めて名誉なことだろう。
これからもタンゴの魅力を伝えていってほしいと思った。
(昔、アルゼンチンの子供、子供…って歌ってすみません)
バンドネオンの魅力とタンゴの真髄に迫る秀作ドキュメンタリー
アルゼンチンタンゴに関する映画は、これまではタンゴ・ダンスにスポットをあてたものが多かった。今回、公開されたこの作品は、おそらくはじめて、タンゴ音楽にのみをとりあげた映画だと思う。見事なタンゴの名曲の数々が、どのように演奏されてきたのか、ベテラン・タンゴ奏者たちの証言と演奏が綴られたこの作品は、タンゴの魅力がほとばしる音楽ドキュメンタリーの秀作に仕上がっている。
この作品では、今までわからなかったタンゴの魅力の原点をいくつも知ることができたのだが、観客にとっての一番の収穫は、今は数が少なくなったタンゴのための楽器バンドネオンの音色の秘密だ。
バンドネオンとはアコーディオンの一種、と思いがちだが、バンドネオンはアコーディオンよりも音色に抑揚がつく特徴がある。だから、音色に演奏者の心、編曲者の思いが強く出やすいのだ。つまり、バンドネオンの音色は、喜びや悲しみ、怒りなどの感情が込められると、思いもよらない変化が生まれるのだ。だから、古い名曲であっても演奏者やアレンジャーの気持ちが反映されて、聞き手は瑞々しい新鮮さを感じる。バンドネオンは、タンゴのような情緒あふれる曲の演奏にこそ向いているのだ。
そして、この作品の演奏者が次のような言葉を吐露する。
「無音を制する者がタンゴを制する」
バンドネオンの抑揚ある音は、感情に訴えてくるような余韻を奏でることがある。しかし、あえて音を消し去り、次の音を奏でることがある。それによって、タンゴ独特のリズムが生まれる。この作品に登場するタンゴの名演奏家たちからは、これ以外にも次々と、タンゴ音楽の素晴らしさが語られる。この作品で演奏された曲はすでにCDで販賣済みなので、曲を聴きたいだけならCDを買えばいいだけと思っていたのだが、よりタンゴやバンドネオンの魅力を深く知る上では、この作品は相当貴重となった。
アルゼンチンタンゴの真髄が描かれているこの作品は、今年のドキュメンタリー映画の中でも記憶に残るものになるのは間違いないと思う。
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