「中年男性と少年の再起の物語」ベスト・キッド movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
中年男性と少年の再起の物語
ジャッキーチェンとジェイデン・スミスの師弟関係がまっすぐで不器用で素直でとても良い。
父を亡くし母の車工場の仕事の転勤でアメリカのデトロイトから北京に越して来たドレが、早々に中国語もわからず、仲良くなれた女の子を好きな意地悪少年に殴られて、中国の洗礼を浴びる。
12歳という、男の子から少年に変わりかけの、反抗期さしかかりの変化にいるドレに、母親は環境変化で頭がいっぱいになっていて、上手い対処が難しい。
そこにたまたま借りているマンションの管理人ハンさんが英語が話せるということで、交流が始まる。
実はカンフー超人のハンさん。なぜってジャッキーチェンだから。
何度もいじめられるドレがカンフーを学びたがり、ハンさんから学びを受ける。
最初は母親からいつも注意される、ジャケットを掛けたり、着脱する日常動作の繰り返しだが、肩甲骨に絶対良いよねぇこの動き。
暴言を吐いたり馬鹿にせず、素直にやるドレが可愛い。
修行の中で、ハンさんとドレで、ハンさんの故郷の北京の山の方に龍の泉の水を飲みに行ったり、万里の長城でトレーニングしたりと中国の絶景も楽しめる一方で、とにかく地道に洗濯物干しや苗の泥など日常でトレーニングを重ねる。
カンフーは、
・平和のためであること
・日常の中にあり、身体をどう扱うか、気をどう扱うか、周りの人をどう扱うか
精神を叩き込まれていくドレ。
そのうちに、ハンさんが妻子を自身の運転による交通事故で亡くしていたという深い心の傷を知る。
・どん底にいる時、這い上がれるかは自分次第なんだ
とドレとの繋がり、ドレの努力を見て、再び気付くハンさん。ドレの因縁の相手とのカンフートーナメントに備えてますます練習を重ねる。
2人の絆はとても強固。
カンフー道場でレッスンを受けるライバル集団達は、師匠が自分の道場を勝たせたいだけなので、反則や怪我をさせたりなどをしてもとにかく勝てば良い方針で、そこにモラルもカンフー精神もない。
そこに初出場で挑んでいく、どアウェイなドレだが、
俊敏な動きと不屈の精神で立ち向かい、優勝!
途中、お母さんがいっぱいいっぱいになっている様子に、親になったからか昔とは違う観点で大泣き。
夫は亡くなり、稼ぎ手となり、中国に引っ越し、息子は早々にいじめられるが打ち明けてこず、反抗期気味、抱えすぎだよママ。明るさを保とうと頑張っているが傷ついた息子には無神経にうつり逆効果。
だけど。アメリカでは工場勤務でも、アメリカ側からお給料が出る転勤の身で中国に来れば、息子の学友達は中国のお金持ち。お部屋も広く、貧困の暮らしはしていない。これが世界の現実。今は中国の元はもっと価値が上がり、日本がその立ち位置。
ただ、有色人種の武道には、爆弾や銃による破壊とは異なる、精神同士のぶつかり合い、気概がある。
どれだけ奴隷にされようが植民地にされようが、立ち上がってきた血と気が駆け巡り、できるだけ非暴力の防御と受け身を基本に技を決める姿勢は、素晴らしい。
ジェイデン・スミスの中に今もその精神は巡っているのかな?
歯をキラキラにさせたりしながらも、具合が悪くなるまで肉魚も食べなかったりと、面白い方向に忍耐が発揮されていそうだ。幼少期の素晴らしい経験から学び、素晴らしい人生を歩んでいって欲しい。