「後ろ向きに前向き」川の底からこんにちは rollcheeseさんの映画レビュー(感想・評価)
後ろ向きに前向き
観賞中3回泣きました。で、その倍くらい笑いました。
前半転がるようにどん底までいってからの後半の怒涛の上昇は見ていて気持ちが良かったです。
役者さん達の掛け合いは絶妙でとても面白く、泣き所にもきちんと自然な笑いを仕込んでくれるので泣き笑いになっちゃう事も多かったです。
ストーリーはしょうがないですよねが口癖の無気力なOL佐和子が中の下の人生なんだから頑張らないとダメだろう!と開き直って前向きになっていく、という感じ。
なんというかこの佐和子がとても魅力的です。演じる満島さんが凄く良かったのも勿論ですが、無気力で妥協癖がありローテンションの佐和子がバツイチ子持ちの健一(ダメ野郎)が逃げ出してから人が変ったようにカッコよくなる姿が凄く良い。開き直った女は強いと言う事なのでしょうか。父親のしじみ会社(傾きかけ)で手作りの歌(倒せ!倒せ!)を合唱しながら会社を立て直していく様子は笑えましたがとても素敵でした。会社が立て直って良かった!ご都合主義あっぱれ!
そんな佐和子の為に健一にカツラを犠牲にしてでも怒鳴ってくれた余命幾許もない父親と、口数少ないながらも佐和子に寄り添ってくれたすれ気味な健一の連れ子加代子、この二人もとんでもなく魅力的なんだからたまったもんじゃありません。もう三人で永遠に仲良く暮らして欲しかったです。お母さんもいますしね、逞しすぎる会社のおばちゃんたちが。しかしお父さんあっちの方元気過ぎだよ、肝硬変こじらせて死にかけだけど。(ほぼおばちゃん全員が父親とあれな関係だったのには笑いました。何その伏線回収)
全体を通して、お前らどうせどうしようもないんだから頑張らなきゃだめだろ!私だって頑張る!頑張れ!という熱いメッセージを映画から感じました。登場人物が全員本気でどうしようもないのでとてつもない説得力です。もう頷くしかありません。
印象に残ったシーンは
・う○こを捨てていた場所に咲いていた綺麗な花を父親に届ける佐和子(こう書くと嫌がらせみたいだ)
・父親と佐和子の河川敷散歩(俺の栄養で育ったしじみ売ってワンピース買えって、笑ったけど泣ける)
・健一に「佐和子の何が悪いんだ!」と怒鳴る父親(ぶっちゃけ佐和子も結構悪いよね)
・加代子に怯えられながらも一緒に寝る佐和子というか二人が仲良くなっていく流れ全部
・しじみ会社のおばちゃん達に大爆発する佐和子(圧巻)
・おばちゃん達と佐和子の大合唱(引く位説得力を持つ歌詞)
・死に際の父親の傍で叔父とカツラの話ばっかりする佐和子、そして頑張ってよと懸命に訴える佐和子(この映画笑い泣きさせ過ぎ)
・巨大スイカ
・おばちゃんたちの大暴露(あんたのお父さんが良い男だったからだよって言われても!)
・しじみ工場で手編みのセーターを握りしめ一人立ち尽くす健一(殴りたい)
・帰ってきた健一に父の遺骨を投げつける佐和子(全員で拾う姿がシュールだ)
特にラストシーンの健一に「あんたの事好きになりたかったんだよ!」と叫んだ佐和子にもらい泣きしました。
これからゆっくり好きになっていけたらいいねえ、と思いましたがそんなダメ野郎で良いのか本当にとも思います。
でも地球みたいにだんだんダメになっていくような、売れないおもちゃ開発して会社クビになっちゃうような、娘の加代子にも呆れられちゃうような、優柔不断で全く頼りにならない特技がダサいセーター編むくらいな、いいとこは優しいとこ?という中の下(下の下?)な健一を好きになれそうだったから佐和子もずっと一緒にいたのだと思うので、なんとか二人で頑張っていって欲しいです。
だけど絶対健一また浮気するよね、そんでまた帰ってくるよね。帰ってくるたびに佐和子と大きくなった加代子に色々投げつけられるのでしょうか。
エンドロールでにこにこ出来る映画は大好きなので☆5。中の下なんだから明日も頑張らないと、と後ろ向きに前向きになれる!そんな素敵な映画でした。