「中の下なんかじゃないよ!なんでこんな面白いん!満島さん頑張ったから特上だよ!」川の底からこんにちは 野球十兵衛さんの映画レビュー(感想・評価)
中の下なんかじゃないよ!なんでこんな面白いん!満島さん頑張ったから特上だよ!
近隣の名画座で公開予定があると知り、これはきっと良質な作品だと思ってアマプラで探しての鑑賞でした。
この作品、主演・満島ひかりの渾身の演技が光に光り、佐和子のキャラが立ちに立ちまくっていました。
観ながらふいに思ったのですが、この作品って、脚本も演出も無かったんじゃなかろうかと。
全てを満島さんに一任して、彼女に役柄を憑依させて、自然体のままアドリブで撮ったんじゃないだろうかとまで思いました。
特に、あの怒涛のラスト。あれ、きっと完全にアドリブでしょ。
そして触れておかなければならない例の“木村水産の社歌(?)”
あれには爆笑を禁じえませんでした。
上がるー♪上がるよー♪消費税ー♪
来るなら来てみろ!大不況ー♪
倒せー!倒せー!政府ー!
中の下の生活♪しょせんみんな中の下♪
MC:「中の下、中の下、どうせみんな大した人生じゃないし、はなから期待してませ~ん」
しじみーの爆詰めー♪しじみの爆詰めー♪
川の底からー♪こーんにちーはー♪
叔父さんから借りた5万円の予算ではテレビCMは無理としても、自主レーベルでスーパーのBGMで流す描写があればよかったと思いました。
「倒せ!倒せ!政府!しじみーの爆詰めー♪」がスーパーで流れるシーン観てみたかったなぁ。
それがきっかけで、シジミの爆詰めがヒットした経緯も。
てか、これオ〇ムみたいな国家反逆罪級の歌じゃん(笑)
そう、この作品のキーワードであって、しばしば登場する「中の下」これが妙にリアリズムがあっていいのよ。そこでもがき苦しむ悲喜劇を楽しむ作品じゃないかと思い。
細かなところでは、育児放棄された加代子の「殺す?」も爆笑でした。
ラストでお父さんの遺骨を投げ散らかすシーンは満島さんの狂気全開!
一見、人生間違えた方向へ達観して、変な醒め方をした佐和子がラストシーンで絶叫する「おとーさーん!おかーさーん!」に笑いながらも、思わず涙ぐんでしまいました。
あんな変な子でも、ラストで本音を吐露したように、愛に関しては、情の深い寂しい子だったのだなぁ…と、愛おしく思い。
「やっぱムカつくわー!あンたじゃなくてさー!あンたがいなくなってちょっと寂しくなっちゃった自分がムカつくのー!(号泣)」→遺骨投げ
「ダメでしょうがないからさー!だから頑張んなきゃいけないでしょうがー!(号泣)」→遺骨投げ
この“頑張る”も、本作において重要なキーワードかなぁ。
でも、これ、頑張ってもどうしようにもなれない私には、胸にグサグサと刺さったわけです。
人生、そんな頑張れないんだよ。
結論、大変良い映画を観ました。
【追記】
う〇こを畑に撒くシーン、リアリティーがありすぎて、思わず臭ってきそうでした。
食事をしながら観る映画じゃないなぁ。
そして、やけに生々しいオバチャンたち(“新しいお母さん”候補含む)のスリップ姿、あれ、ドン引きでしたわ。