「愛されるいのち。」愛する人 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
愛されるいのち。
名画座にて。
こちらも結末がエ!?と思うような展開になる話だったが、
祖母、母、娘、養子にこだわる妻、家政婦、様々な女性のかたちが
臆面なく描かれた秀作の部類に入る作品。ただ登場人物が多岐に
渡りテーマが散漫になるところが残念。また彼女らの選択に頷ける
箇所が少なく(日本人だからか?)どうも偏屈で意固地な女性という^^;
パターンが多かった気がしてならない。まぁそれもこれも…
子供という希望を経て、だんだんに変わるところを描いているのだが。
14歳で妊娠・出産、その後母親によって子供を養子に出されたカレン、
その娘で37年間母親の顔を知らず、弁護士として自立したエリザベス、
不妊の末、養子をもらう決断をするものの夫との仲が壊れるルーシー、
主要な場面はこの三人で構成されている。
冒頭で一見交わる可能性すらないと思われるこの三人の選択未来が
意外な形で交わるラストまで目が離せない…。
先にも書いたが、とにかく強烈なトラウマを抱えた女性たちが登場し、
怒り、泣き、喚き、あるいは他人を不幸に陥れたりと、あまり気持ちの
いい展開にはならないのだが^^;彼女らの抱える問題は女性ならでは、
もし自分がその立場だったら、を匂わせる。自分の子供を手放すなど、
普通ではあり得ない選択をしてしまったことへの贖罪が他人を遠ざけ、
物事を批判的な目で見ることしかできない不幸を連鎖、祖母にしても
その原因を作った自分を最期まで責め、母親の顔を知らない娘にしろ、
愛する喜びを自ら遠ざけては、罪のない家庭をぶち壊す行動を起こす。
観ていて非常に疲れる行動ばかりなのだが、自分がその立場だったら
やはり何もかも忘れて楽しく暮らせはしないだろう。若さゆえの過ち、
とはいえ人間の命がいかに尊いか、あとで知るのは後悔ばかりとなる。
女にとって子供とは…を考えさせられる物語でもある。
さて、彼女らの絶望の傍らでは、とても愛情深い男性陣達が登場する。
こんな高圧的な女性のどこがいいんだ!?と思うが^^;男心は分からん。
彼女らの闇を救うべく、少しずつ少しずつトラウマから解き放つ手助けを
する男性達。彼らの行動には頭が下がる部分も多かった。愛するとは、
拒絶心からこれほど豊かに人間を成長させることができるかと思うほど。
すべてを受け入れ、拒まれても屈せず、何度でも愛情をぶつける男性に
あれほど偏屈だった心が解放されていく過程は見事としか言いようがない。
特に母親を演じたA・ベニング。彼女のトレードマークとなる笑顔がいつに
なったら見られるのかと思っていたが、後半でどんどん彼女は変貌する。
37年間封印されていた喜びや幸せは、パコの尽力で見事に開花される。
娘は予期せぬ妊娠で母親の立場を痛感し、養子が欲しい妻は一辺倒の
自分の行動を夫や母親に批判されて傷つく。そしてこの三人の運命は…
他にも印象深い登場人物達がいるのだが、そこに印象を持たせたことで、
かえって中途半端な感動を抱かせる結果となってしまったのが勿体ない。
彼女らの笑顔が見られたことは素直に嬉しいが、では本当にこの選択で
良かったんだろうか…と考えてしまう部分も多い。当たり前のことになるが
子供には本来の両親がいる。その両親の選択がこれからの家族の未来や、
子供の運命を決めてしまうところがこれほど切なく感じられたことはない。
(子供は親を選んで生まれてくるといいますね。これからの未来を託して。)