セラフィーヌの庭のレビュー・感想・評価
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独特な画風
週3回の家政婦、それに各屋敷のシーツ交換と洗濯、それに肉屋の手伝いとか何やら雑多なパートタイマーといった忙しさ。それでも家賃は滞納するほど極貧状態。屋敷の女主人に絵を見せると、諦めて普段の仕事にもどれと言われたセラフィーヌ。しかし、ウーデだけは違ってた。独自の絵の具に興味を示すが彼女は教えてくれない。とにかく彼女に対して援助を惜しまないウーデ。やがて第一次世界大戦が勃発すると、敵国ドイツ出身であるウーデはフランスを離れなければならなくなった。
1927年、フランスに戻ったウーデは、音信不通だったセラフィーヌの居所を探し当てた。そして上達したセラフィーヌを全面的に支援するようになったのだが、世界恐慌の影響がフランスにも訪れ、彼女の浪費に我慢できなくなった。城のような家、高価なウェディングドレス・・・誰と結婚?そりゃ守護天使のお告げだから、誰にも言えない。
そして個展の計画も延期になり、ウーデが自分の絵を嫌いになったのだと思い、徐々に精神を病んでいき療養所生活を余儀なくされる。もはやウーデにできることといえば、彼女の絵を世界に知らしめることだけ・・・
赤い絵の具の原料は何なんだ?それにウェディングドレス、赤いマリア像とか、なんだか未解決のままだけど、そこまでセラフィーヌの心象風景にしてしまうのか。どぎつい花の色に圧倒されたけど、どことなくペイズリー柄を想像してしまった。
実在の女性画家の孤高な半生
ある実在の女性画家の孤高な半生を描いた伝記的人間ドラマ。岩波ホール上映というだけでマニアの方には内容が想像できるでしょう・・。
彼女の名はセラフィーヌ・ルイ、独特の色彩とデフォルメ表現に強烈な個性を感じます、彼女の才能を見出したヴィルヘルム・ウーデは劇中でも「彼女のタッチはゴッホを超えている」と賞賛しています。日本では世田谷美術館に展示があるようです。(個人的には印象派好きですのでお名前すら本作で知りました、ごめんなさい)
(ここからネタバレ)
映画はパリ近郊の古い街、サンリスで貧しい家政婦として健気に働く日常描写から始まり、それが淡々と続きます。彼女の絵が画商の目に留まり、一時光明が拓けたかに見えたのですが第一次大戦や世界恐慌など紆余曲折があり、晩年は余りの境遇の変化に戸惑い精神を病んでしまいます。
鮮烈な貧しさぶりというのもおかしな表現かもしれませんが年中、着の身着のまま、小川で体を洗い、食べ物も施し頼み、買う画材も白のラッカーのみ、赤は肉屋の下働きでくすねた血、野の草花の汁や粘土、教会の燈明の油や蝋などから自ら調合という壮絶さ、絵画はもとより独学で天使のお告げと言う、だからか絵を描いているときは讃美歌を口ずさむという敬虔なクリスチャンというのも心を掴まれます。
サンリスは森と城壁に囲まれたフランス王家ゆかりの歴史的建造物が数多く残る古い街並ですので風情がありますね、セリフも極端に少なくモノクロかと思わせる陰影の強い映像表現もあって、監督の美意識、こだわりがほとばしります。
セラフィーヌを演じたヨランド・モローさんは「アメリ」のマドレーヌ夫人でしか存じ上げなかったのですがベルギー生まれで監督・脚本もこなす才女、殆ど無言劇のような役どころを見事に演じ、その存在感は凄まじくさえ感じました。
ささやかでも没頭できるものがあれば貧困の底にあっても励みになるのだが、一旦、成功の喜びや裕福さを知ったが為に心が折れるという皮肉さは根源的な示唆に富んでいますね。
概ね切ない話ですし、万人受けする類の娯楽映画ではありませんが心に沁みる良作でした。
主演のヨランド・モローに脱帽
大好きなタイプのヨーロッパ映画でした。
必要最低限のセリフと画で見せていく。
セラフィーヌには「絵」という手法があって本当に良かった。
壊れていくシーンは、痛々しく、苦しい。
教育という型にはめられなかったからこそ生まれた天才、なのだと思う。
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