「家族って花火の様に美しいね!」おにいちゃんのハナビ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
家族って花火の様に美しいね!
この映画のファーストシーン、花火大会で打ち上げられるその花火には、この街に住む人々の思いや、願いが1つ1つの花火に託して打ち上げられる花火で、この映画の物語は実話であると言うテロップが写し出されるところからこの映画は始まるが、このテロップを読んだ瞬間から、もう涙が溢れ出した。
自分でも、理由は全く解らないが、花火には凄い思い入れが有ると言うか、毎年8月になり、お盆が過ぎると、夏休みも終わりに近づいて、その頃には、何故か人生の悲哀を子供の頃から感じてしまうのだった。8月の初めは力強く大きく光輝く太陽と、何処までも広がる青空と真っ白い入道雲、そして元気に鳴く蝉の声も、夏祭りが終わる頃には、段々と秋色へと変化してゆく。すると本当は実りを味わう事が出来る素晴らしい季節の始まりのはずの秋がやたらに、もの哀しく心に覆いかぶさってくるのだ。
この映画の主人公の妹、谷村美月演じる華は、白血病を患っている高校生である。それにも関わらず、彼女は夏のひまわりが太陽の光に、天へ向かって輝く様に、その残された十代の短い時間の総てに人の平均寿命80年分の笑顔を凝縮するかの様に、元気に精一杯に笑顔で暮らす事を日課としていくその姿が、本当に健気で、可愛らしくて、いじらしくて、号泣してしまうのだ。
今も、こうしてこれを書いていると思い出しただけで、涙が溢れて来る。
一方華のおにいちゃんを演じる高良健吾の、不器用な、引き篭もり青年を好演している!!
そして、宮崎美子演じる母も、大杉漣演じる父親も、それぞれみんな、みんなハマリ役で観ていて、病気を患っている家族を持っている人達ってきっとこう言う生活なのだろうと心にスーっと彼らの日々の会話の一つ一つの思いが沁み込んで来るのだった。
病弱な娘を抱える家族は、どうしても、その子を護る事が生活の中心になって、家族の総てが廻り出すし、その過程で引っ越しを繰り返すと巧く環境の変化に順応出来れば良いのだが、このお兄ちゃんの様に、人付き合いが下手で苦手なタイプの人間もいると、当然引き篭もってしまう人間が出て来ても不思議では無いのだ。決して甘ったれの弱虫と一言では、片づけてしまえない思いを内包するものだ。
しかし、この妹と兄の心が次第に融合して蟠りが無くなり、お兄ちゃんが社会復帰していく過程が丁寧に描かれていくし、華の気持ちや、父と母のそれぞれの子供に対する親の公平に子供を想いやろうとする、その姿が淡々と綴られていくシナリオが素晴らしいのだ!
戦後の日本は60年以上も経ち、高度経済成長と共に、核家族化が進み、3世代同居が無くなる中で、家族の絆、家族間のコミュニケーションの不足や、生活時間の違いや、多くのストレス等の原因で、生き籠りや、自殺の問題の多いこの今の家族制の中で、例え、病気で娘を失ってしまったこの家族は大きな悲しみを背負ってしまったが、遺族3人の心がこの華と言う娘を失っても、尚4人の心を一つに繋いで生きる生活をしている事が何より素晴らしい!夏の夜空にパッと打ち上げられ咲き誇る大輪のその花火こそは、本当に家族としてこの世に生れ、その短い人生を共に生きる人間の人生そのもののようである。
あなたの花火はどんな花火だろうか?短くとも、美しく咲かせて欲しい!ありがとう!華