「止められない緊張が走り抜ける」アンストッパブル(2010) haruさんの映画レビュー(感想・評価)
止められない緊張が走り抜ける
トニー・スコットの遺作となった本作は、切れ味のあるカット割と加速する音楽が相互に作用し、スピード感と極限の緊張感を最後まで押し切る。『クリムゾン・タイド』『マイ・ボディガード』『デジャヴ』などで培われたデンゼル・ワシントンとの名コンビの持ち味が、列車という密閉空間の中で最大限に発揮されている。
本作で描かれる暴走事故は偶然ではなく、判断ミスが連鎖した結果として描かれる。エアブレーキを十分にかけないまま運転席を離れたことで列車は無人で動き出し、主人公(クリス・パイン)側の列車も貨車を連結しすぎたため待避線に収まらない。さらに管理部門の形式的判断が初動対応を遅らせ、事態は制御不能へと転がっていく。
張り詰めた緊張は最後まで失速せず、観終えた後には走り切った感触だけが残る。その切れ味こそが、本作の最大の魅力だ。
ラストに添えられる登場人物たちの簡潔な後日談もまた、その疾走感を損なうことなく、作品を爽やかに締めくくっている。
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