「何をテーマとして描こうとしているかという軸が見えてこなかったですね。」踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ! 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5何をテーマとして描こうとしているかという軸が見えてこなかったですね。

2010年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 毎度の面白さは、まるでお祭り騒ぎのように、派手な事件が起こり、舞台となる湾岸暑がパニックに陥ることでしょう。
そして賑やかでユーモラスな登場人物に囲まれながら、時折見せる主人公の青島刑事の熱気溢れる決めぜりふに、思わず喝采を送ってしまうところが本シリーズの魅力なんだろうと思います。
 但し本作は犯人の犯行動機の希薄さから、全く物語にリアルティが感じられませんでした。前作までの警察官僚組織に挑戦する現場刑事の基本構図が、本作では曖昧になってしまったことに多いに異議ありと感じられました。
 君塚脚本は自身の監督作品「誰も守ってくれない」に続けて本作でもネット社会に潜む狂気を描こうとしてはいるのですが、今回は犯罪者の動機に繋がる描写の掘り下げが甘くて、一体何のために彼らは犯行に及んでいるのか見えてきませんでした。
 だから犯人グループが、青島刑事の逮捕した過去の犯罪者の釈放を求めたのも、どういう理由か掴みにくかったですね。
 結局、前回好評だった小泉今日子の役どころへ強引に引っ張っていこうとする筋書きが見え見えなんですね。他にアイディアが浮かばなかったのでしょうか?

 それにしても前作から7年経って、本作も時の流れを感じさせます。青島は柄にもなく係長に出世。部下を持つ青島なんて考えにくいところです。和久さんは死んでしまい、その甥っ子が刑事となって、青島の部下になり、甥っ子が手にする和久ノートが、和久さんの代わりになっています。
 室井も出世してすっかり警察官僚となり、刑事捜査からすっかり外れて。政治家相手に根回しの日々を過ごしていました。
 警察を変える意気込んでいたころの志はどこへ吹っ飛んだのでしょう。室井の変節がこのドラマをつまらなくしてしまいました。警察官僚を描くならまだ「相棒」のほうが面白いです。真下正義は、交渉人としてミスして外されますが、ラストで意外な出世をして驚きました。
 お馴染み暑のトップ三役は、またまた完全に漫才でいうボケ没になって笑わせてくれます。警察を批判した映画はこれまでにもあるが、警察の機構を皮肉ってこんなに笑わせてくれた映画はちょっとないでしょうね。

 さらに新たに登場した小栗が演じる管理補佐官の鳥飼は本作にシリアスなしまりを与えてなかなかいい役どころでしたが、青島と犯人確保か射殺かという路線対立を持ってくるなら、もっと徹底して対決させたほうが良かったと思います。
 それと青島の重病説ももっと徹底的にシリアスして、もっと同僚のすみれを気が気でないそぶりをもっと見たかったなぁ~。

 第3作の今回は、舞台の東京の湾岸署が新庁舎に引っ越すという大騒ぎの最中をねらった犯罪者たちの挑戦を、署をあげて受けて立つという話。新湾岸暑全体が人質になるという大胆なアイデアは面白かったのですが、そこへ行き着く湾岸暑のあまりのセキュリティーの甘さに、それはあり得ないだろうとしらけました。
本広克行監督にしては群衆場面の威勢の良さの中でたくさんの俳優たちの印象的なキャラクターをよく生かしている演出だとは感じましたが、何をテーマとして描こうとしているかという軸が見えてこなかったですね。

流山の小地蔵