「「悲しい程にここ数年のCG制作作業が」スター・トレック イントゥ・ダークネス kisumixさんの映画レビュー(感想・評価)
「悲しい程にここ数年のCG制作作業が
土方化しているのがよく解る作品」
まだまだガキであるカーク船長とその取り巻きの人間模様。悪役のイギリス人俳優ベネディクト・カンバーバッチの(SFXアクションシーンではなく眼や表情の)演技力が高過ぎてむしろチャッチいSF感が前面に出て来てしまっている。
そんなに前ではない前作2009年版と比べてCGのクオリティーが格段に向上。
少し前までは特殊・高度・高価なシステムとそれを扱える一握りの才能ある技術者が揃ってこそのものだったものが、制作ハード/ソフトがここ数年で加速度的に高機能化・廉価化し、またそれを使う人間の数が有り余っている為(私でさえも仕事で「僕映画のCGをちょこっとやってるんです。ところで何か美味しい話ありませんか?」系自称CGクリエイターに出会う機会が随分増えてきて食傷気味)、人件費も低賃金化した結果CGのクオリティーが上がってくるという悲しい現象。アカデミー特殊効果賞受賞の「アビス(1989)」でCG効果の幕開けがあり(いや「TRON(1982)だ」という人もいるが、あれは実際はほとんどが手描きアニメーション)、できる限り実写に拘りどうしても撮影不可能な場面のみをCG的に加工処理した「ブラックホークダウン(2001)」あたりまでが良い時代で、「リアルなCGを安く作る」合戦が繰り広げられる昨今は、「実写やアニメよりより安く美しく仕上がるからCGにする」という後ろ向きな発想が先行。
同じSFで言うならば、CGのない当時に宇宙の真の闇と宇宙船の影を忠実に再現する露光のために1カットの撮影に数時間掛けた「2001年宇宙の旅(1968)」の、実はプラモデルが醸し出すあのリアル感を別の映画でお目にかかれないと思うと残念(「スターウォーズ Ep4(1977)」は9年も後出しであるにも拘らず資本商業至上主義娯楽者監督が撮ったものなので格段にプラモデル感が出ていてそれはそれでチャチくて面白かった)。