「カンバーバッチは客寄せパンダと看破せよ!」スター・トレック イントゥ・ダークネス CYNDYさんの映画レビュー(感想・評価)
カンバーバッチは客寄せパンダと看破せよ!
※ネタバレです。ご注意ください。
(ネタバレ部分は文章冒頭に注意を入れます。)
映画としてのクオリティがどんどん上がってくれています。
うれしい限りです。
ベネディクトカンバーバッチの人気の高さから彼ばかりがレビューや評価でモノを語られがちですが、最大の見どころはザッカリークィントです。
カンバーバッチがダニエルデイリュイスの再来を髣髴させるのはわかるけど、今回は普通の敵役です。
彼だけに注目させた理由はネタバレを防ぐ意味でも有用だったと思います。
映像は前作をしのぐけれど、ほとばしる感情の掛け合いのような人間味あふれるシーンは前作の方が上だったかもしれません。
前作はとてもおすすめなので、見ていない方は是非ご覧ください。
また、よくある感想で、前シリーズとのつじつまがという方がいますが、前作でスポックの故郷、タイムトラベルによる凶悪な輩の仕業で惑星バルカンが消滅しており、こんなことは正史にはまったくない事件ですので、完全なパラレルワールドです。カークやスポックの性格が多少違おうとも全く問題がないだけではなく、タイムパラドックスものやパラレルワールド物はお得意なのであまり気にせずつじつまは合っているものとして従来のファンはむしろ楽しんでいると思います。
<ここからネタバレです。映画を見た方でご興味のある方だけにお勧めします>
・この映画でスタートレックを初めてみた人は本当の意味では楽しめていないと思います。少なくとも「カーンの逆襲」は映画を見た後、見ると感想は違ってくると思います。さらにTVシリーズの「優性人間」の回も見ると、当時の「カーンの逆襲」のインパクトもわかると思います。
・TOSと映画第二作・第三作を見ている方は、冒頭ですでにジェネシスのエピソードを想像したかもしれない。
あの赤い未開の惑星。残像は緑。ジェネシス計画によって急速に生命の息吹を発生し、スポックを蘇らせた惑星のオマージュと思えてならない。この時点で、カーンの登場を確信しました。
・続いて火山でのスポックのシーン。完全な映画第二作へのオマージュ。ここでは恋人ウフーラの心配をよそにカークの機転で転送がぎりぎりで間に合いますが、映画第二作「カーンの逆襲」のラスト前シーンでは放射線の飛び交うエンジン内で死を覚悟した同様なシーンで、スポックは死んでしまいます。ファン号泣のシーンです。
・ということはカークが放射線を浴びながら皆を助けて死んでしまうあのシーンもパラレルワールドの一足早い再来か?未来への友情の伏線か?ということで同様のオマージュになります。
・カーンはファンにとってはそのような経緯から通算これで三度も登場する最大の敵なわけです。「カーン」の一文字でも出てしまえば一発でネタバレ、というかファンの誰しもがカンバーバッチならバルカン人かロミュラン人(同種)、でなければカーン(カーンはヒスパニック系に見えたがネタバレ防止の目くらまし)だろう、とは踏んでいたはずです。それでも知らないで見た方がやっぱりいいでしょう。僕も予測はしていても劇中で「カーン・ノニエン・シン」ってセリフ聞いて興奮しましたから。
・スポックが熱いです。クィントの演技が光ります。終盤、カンバーバッチにスポックつかみ(バルカンアタックって名前になったらしい。旧シリーズ小説ではスポックつかみ)を連続技で仕掛けますが、苦悶の顔はみせるものの倒れません。これはファンにとっては、「カンバーバッチ・カーン!超ツええっ!」ってことになりますが、事情を知らない視聴者は「肩ツネルってそんなに効くの?」って少し思ったのではないでしょうか?
・ウフーラとの恋愛も少し進展しますが、TOSでは全くなかった話だけにポーカーフェイスにもほどがあるっ!とほほえましくとらえるのが正しいトレッキーでしょう。ちなみに正史エピソードによればバルカン人は7年ごとに訪れる発情期による感情爆発にポン・ファー(精神的な生殖行為とか何やら)をしないと狂い死にしてしまうため彼には許嫁がバルカンにいるので不倫行為になります。(前回の消滅で彼女もなくなったかもしれないけれど。)
・小型宇宙艇でのチェイスシーンやカンバーバッチとスポックの対決シーンは完全にスターウォーズのEP4(フォースの力を・・)やEP3の火山でのオビワン対アナキンと同じなのでILMの協力が強いことがよくわかります。(ソフト使いまわしか?)次回のスターウォーズ楽しみですね。
以上ネタバレ感想でした。