「人間らしいミスや執着や、情がいいスパイスになっていてとても親近感を感じました。」ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
人間らしいミスや執着や、情がいいスパイスになっていてとても親近感を感じました。
シリーズ前作よりも、初監督したブラッド・バード監督のたたみ掛けるようなスピード感が素晴らしい!ブダペスト、モスクワ、中東ドバイ、インド・ムンバイと、めまぐるしく舞台を移動しながら、息もつかせぬ展開が続くのです。気合を入れて鑑賞しないとおいてけぼりを喰らいます。
トムのノースタントのアクションと相まって、最高のエンターテイメント作品だぁと、すっかり魅了されました。
最もハラハラするのは、ドバイの地上828メートルの超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」の壁を登る場面。保安管理室に入り込むため、イーサンは吸い付く手袋で目もくらむ高さをよじ登っていきます。それはCGでも合成でも、スタントマンでもない!命綱のケーブルがあったとはいえ、クルーズ自身が本当にビルに貼り付いているというから驚きです。普段CGに慣れっこになって、大抵の映像には驚かなくなっているけれど、やっぱり本物は迫力満点ですねぇ~。
なぜトムはこれほどまでに命懸けのアクションに挑むのでしょうねぇ?それだけ観客に対して、とことんサービス精神に徹しているかからでしょうか。脱帽ものです。
アクションばかりでなく、今回は妻を殺されたイーサンが復讐のためセルビア軍人を、任務とは関係なく殺してしまい投獄されるというプライベートなストーリーも伏線で進行します。ラストでイーサンがどれくらい妻を愛していたのか、表情だけでちらりと暗示させるシーンには、グッと来ましたね。(ネタバレになるから書きづらい)精密機械のような、ストイックなイーサンの内側には、人を愛してやまないホットな赤い血が流れていたということでした。
成り行きでイーサンのミッションに協力することになった、分析官のブラントが、実はかつてイーサン夫妻の警護を極秘任務で担当していて、妻の死を自分の責任として悔やんでいる設定も、ちゃんとラストまで活かしておくところがなかなか憎いです。
さて、物語はロシア・クレムリン爆破のテロ容疑をかけられたイーサンが、スパイ登録を抹消されながらも、次なる核テロの阻止に挑むというもの。ミッションの難易度も高くなって、今回は政府の支援を断たれ、協力者は部下3人のみ。現地に残された資材しか使えない不利な条件をものとせず、イーサンのチームは手がかりを追って、クレムリンの内部など侵入不可能な厳重警備の場所にも果敢に飛び込んでいきます。核テロのリアルティにもこだわっており、『24』よりも説得力を感じました。
毎度お馴染みの宙づりアクションは、今回はイーサンでなくブラントが冷や汗を流します。ドバイのシーン以外、イーサンの役回りは、もっぱらターゲットの確保がメイン。そのため往来で、ターゲットと追いかけっこのシーンが続きました。トムは相当全力で走り込んでいると思いますよ。
完璧すぎた前作と違って、今回は随所にちりばめられた人間らしいミスや執着や、情がいいスパイスになっていてとても親近感を感じました。