「個人技ではなく、チームプレーで魅せるスパイ芸」ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
個人技ではなく、チームプレーで魅せるスパイ芸
期待値のハードルが低くなっていたためか、かなり面白かった。
シリーズで一番の出来かな。
冤罪のおかげでフォローしてくれる後ろ盾のIMFが解散してしまったのが幸か不幸か、従来のイーサン個人の神憑りプレーより仲間とのチームプレーが際立っている。
息の合った連携の妙技が重視されたミッションはこれまでのシリーズと一線を画す迫力と面白味を生み、2時間があっという間に過ぎてしまった。
前作で結ばれたハズの奥さんとの恋仲は、既に破綻していて、未だに未練タラタラなのも、スーパーヒーローらしからぬ人間臭さが光り、興味深い。
メカニック担当のダン、男勝りの紅一点ジェーン、ワケありの分析官ブラントとの個性的チームメイトとの堅い結束力が巨大組織と張り合える唯一のエネルギー源であり、スパイモノでは付き物の仲間内の裏切り・騙し討ちの要素は意外と薄い。
“絆”が鍵を握る点も、今年を象徴しているのかもしれない。
故に、PVで必ず登場する超高層ビルのクライミングシーンは、その前後で繰り出されるチーム内の掛け合いを含めたうえで、今作の目玉と成していると評としても過言ではなかろう。
また、敵が見る奥行きまで計算された擬似スクリーンや、強力吸着手袋、人間浮遊ラジコンカーetc.ドラえもん顔負けのハイテクマシンが目白押しなのもオタク心をくすぐる。
更に、インドでのジェーン(ポーラ・パットン)が仕掛ける罠をメインに、美貌の殺し屋モローetc.女性陣の醸す危うい色気がオトコ心をくすぐらせる抜かりのなさも秀逸。
(個人的にはジェーンの活躍シーンはもう少しジラして欲しかったかな)
ハラハラドキドキのアクション、連携プレー、ハイテク危機、お色気、騙し討ちetc.etc.スパイモノの醍醐味がバランス良く詰め込んでいる点からも、本家の『スパイ大作戦』に最も近い作品であると云えよう。
ボリューム満点の食べ応え故に、「何じゃそりゃ!?」って唐突過ぎるサゲに面食らっちまうのは、チョイと難儀だが、そういう大風呂敷のバラまきを含めてスパイ映画の愛嬌やと割り切れば、クリスマスにゃあ〜なかなか結構な贅沢ディナーではなかろうか。
では最後に短歌を一首
『落城の 濡れ衣背負ひ 天を蹴る 砂場の目利き 太陽を読む』
by全竜