「【”真なる勇者。”父を殺された僅か14歳の少女が、荒くれ保安官とテキサス・レンジャーと共に父の仇を追う物語。今作はシンプルな構成であるが、心に響く西部劇なのである。】」トゥルー・グリット NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”真なる勇者。”父を殺された僅か14歳の少女が、荒くれ保安官とテキサス・レンジャーと共に父の仇を追う物語。今作はシンプルな構成であるが、心に響く西部劇なのである。】
ー 今や、西部劇映画は、日本の時代劇映画と同様に製作本数が大変に少なくなっている。それは馬を含めたセットや意匠にかかる経費、そもそも馬に乗れない俳優が増えている事や西部劇に合う土地が少なくなっている事が原因なのかもしれない。
だが、カントリーミュージックの需要が尽きないように、一定の人気があるジャンルであると思う。
故に、近年であれば今作のコーエン兄弟の小品「バスターのバラード」や、名匠ジェーン・カンピオンの「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が、評価されるのだと思う。
今作は、そんなコーエン兄弟が2011年に公開した貴重なる西部劇である。
この作品は、父を殺された僅か14歳の少女マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)が、荒くれだが真なる勇気を持つ保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇い、その仇を追うテキサス・レンジャー、ラビーフ(マット・デイモン)と共に父の仇を追う物語なのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作の魅力は、矢張り何と言っても、父を殺された仇を取るために保安官を雇い、自らも同行するど根性少女マティ・ロスを演じたヘイリー・スタインフェルドが、圧倒的な存在感で描かれている事であろう。
最初は、保安官ルースター・コグバーンと、テキサス・レンジャー、ラビーフに軽く見られている彼女が、置いてきぼりを喰らった時に、愛馬と共に河を肩まで浸かって渡るシーンから、彼らが彼女を見る眼が変わるのである。
・彼らの父の仇チェイニー(ジョシュ・ブローリン)を追う旅は、生半可なモノではない。野宿をしながら、又雪が舞う中を只管に馬を駆り、追って行くのである。
・その途中では、マティ・ロスは様々な曰く有り気な人々と出会い、殺し合いも観るのである。だが。マティの執念は揺らぐことはないのである。
■マティが漸く、チェイニーを見つけた際に彼はマティを軽く見ている。”銃弾を撃つには、撃鉄を落とさなきゃ駄目だぜ。”というも、マティがその通りに撃鉄を落として彼を撃つと、”本当に撃ちやがった。”という事からもそれは分かるであろう。
だが、マティはその反動で、毒蛇がうようよいる洞穴に落ちて、咬まれてしまう。そこに駆け付けた保安官ルースター・コグバーンは、彼女の傷口をナイフで切り毒を吸い出し、馬で医者の元に駆け付けるのだが、途中で馬がへばるとナント、彼は彼女を両腕で抱えて走るのである。
可なり、染み入るシーンである。
<今作の終わり方も良い。25年が経ち、大人になったマティ・ロスが、保安官ルースター・コグバーンを訪ねて来るシーン。彼女の蛇に噛まれた腕はない。だが、彼女は毅然として彼の消息を訪ねるのである。
だが、保安官は少し前に、亡くなっていたのであるが、彼女はそれを聞いても涙を流さずに、その事実を受け入れるのである。
今作は、父を殺された僅か14歳の少女が、荒くれ保安官とテキサス・レンジャーと共に父の仇を追う心に沁みる西部劇なのである。>