「今作に囚われた女。」月に囚われた男 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
今作に囚われた女。
名画座にて。
まったく予想だにしていなかった本作の素晴らしさ。
こういうのを観られて本当に嬉しい。名画座サマサマv
D・ボウイの息子D・ジョーンズが挑んだ初の長編作品は
驚くほどの低予算ながら(500万ドル以下)センスが光る。
父上は音楽界で多大なセンスに溢れる功績を残したが、
その息子は映画界で未知なるセンスを披露してくれた。
こういう才能って、やはり継承されるのかな^^;
いわゆるクセモノ俳優(誉めてますv)S・ロックウェルの
ひとり芝居と聞いたら、よっぽど変っているか、理解に
苦しむ難解なSFスリラーを想像させるが、本作は違う。
冒頭こそ、アレ?なんだろう…と思う幻覚映像が出るが、
根本に横たわるテーマは最後までまったく変わらない。
怖いといえば、確かに怖い。そしてとても悲しい。
でも近未来(でなくても)こういう結果をもたらす事件が
起こらない保証があるだろうか。自分が彼の立場なら、
真実が分かった瞬間、気が狂ってしまいそうだ。。
自分という存在のすべてが覆されてしまいそうで怖い。
S・ロックウェルは完璧なミッションを今作でこなしている。
彼がこんな普通の人間を演じられるなんて(誉めてます)
私は彼のどこを見ていたんだと思うくらい巧い。何度も
泣きそうになった。彼の真実が段々明るみに出るにつれ、
このタイトルの意味が深く胸に突き刺さる。囚われた男…
更にHALを連想させる人工知能コンピュータ・ガーティを
声で演じたK・スペイシーの素晴らしさ。主人公と二人で
月での任務をプログラム通りに進めていく役どころの彼。
まったく澱みのない思考能力に長けた彼が、最後に選ぶ
あの決断…。これにも泣けた。なんなんだ、この映画!
恐ろしいまでの愛と意外性に彩られた秀作だと思う。
そりゃ新人賞も獲るだろうな~と納得至極。
様々な場面でサムが見せる表情、動き、喋り方までが
三年という月日を見事に語っているところに注目しつつ、
その現実に屈せず闘いぬいた彼ら(!)に拍手を贈りたい。
(すっかりこの作品に囚われてしまった。か…帰れない!?)