劇場公開日 2010年4月10日

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「ロボットで足る仕事」月に囚われた男 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0ロボットで足る仕事

2019年9月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

 核融合炉の扱いやすさで言えば重水素とヘリウム3反応があげられるが残念ながら地球上には無く、月に多いのは事実である。そんな未来想定で月のヘリウム3採掘場で働く訳あり労働者サムの物語。実はサムはクローン人間、それも一体でなく多くのスペアが保管されている。
自身が消耗品程度の存在で尚且つ別の人格のクローン、コピーに過ぎないと知ったらどうならるか、落胆と混乱、同病相哀れむ心理、創造主への憎悪など葛藤の日々が続く・・。
クローン羊のドリーが誕生してからというもの科学と倫理性の問題提起が活発だが悪徳企業が人的労働力の廉価な調達目的でクローン技術を使ったという設定は稚拙すぎないか。
採掘、加工はマシンが自動で行い回収と地球への送出という単純労働を行っている、この時点で非人間的な作業、ロボット向きと思ったら案の定サムは人造人間、労働力が欲しいなら有機体で作るよりもマシンの方がむいている、酸素や水、食料、排泄物処理など付帯設備も複雑になるし、疲れるしミスも犯す、厄介な感情などわざわざ持たせる必然性が理解できない。サムがアインシュタイン並みの天才脳の持ち主とも思えないし、劇中では職業訓練の手間を省くためのクローン化としているがDNAが同じでも人格、記憶は別、脳の経験知を複写する方法があるなら別の個体でもできるだろう、高度な有機科学を持ったにせよアシスタントロボのガーティに機動性を持たせた方が妥当、ルナ産業ならずとも企業なら経済合理性から考えても適任だ。どうしてもと言うなら、ヒューマノイド向きの仕事を先ず見せてから本題に入るくらいの演出は基本だろう。人格とは何か、人間の尊厳を問いたいというテーマをクローン問題にひっかけて見せようとする着想は悪くはないが仕込みにもう少し手間をかけて練って欲しかった。

odeonza