「本当に全員悪人ばかりというのが気に入った」アウトレイジ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
本当に全員悪人ばかりというのが気に入った
総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 70
音楽: 60
わざわざ歯医者にいるところを襲ったりしていてはすぐに通報されて警察沙汰になるだろうし、新幹線の中で銃を撃って殺しをしていては逃げ場がないだろうし、殺しの場面を劇的にしようとした演出は逆に嘘っぽい。それに抗争といってもここまでたくさんの人が死ねば警察も大規模に介入してくるだろうしただごとではすまないだろう。北野映画らしい激しい暴力はちょっと辟易することもある。
反面、しのぎを得るために麻薬販売に噛んでいったり、特に賭博場を開いたりするために工作していく場面は面白かった。何よりも宣伝文句の「全員悪人」というのは気に入った。確かにろくなやつが出ていない。相手に餌を見せて騙して使用しながら、必要がなくなれば結局は餌をやることなく処分する。もともと本当は最初から餌をやろうなんて考えてもいない。そんな自分の利益しか考えないやつらが実に多い。そういえば学校でも会社でもそんなやつは時々いる。まして非合法なヤクザの世界なんだから、表面はにこやかにしながら権力を笠に着てとことん搾り取るだけ搾ってやろうという、狡くて汚い人々の登場が逆に小気味よい。そしてそんな「騙す」人々が自業自得で破滅するのも、野望を持ってそれに絡んで「真面目に」悪いことをする普通の悪人たちが破滅するのも当然の成り行きで、物語を締めくくるのもやはり悪人というのが徹底していてへんに感心した。
昔の北野作品はたけし軍団がたくさん登場して、その演技の下手さゆえに作品の質が下がっていた。しかし本作も含めて近年は予算もあるのだろうし有名俳優がそろっていて、登場人物はなかなか迫力があった。