「欠点らしい欠点は無いんですが…」しあわせの隠れ場所 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
欠点らしい欠点は無いんですが…
作品の中身は文句を付けるのもはばかれる位に、欠点らしい欠点が見受けられない。
寧ろ嫌みな位に、主演のサンドラ・ブロック一家が、絵に描いた餅の様な善人に描かれている。
彼女の気の強さ、多少の事には動じない性格は。同じ屋根の下に他人が入り込んだとしても、簡単に受け入れてしまう広い心を持ち合わせる。でも、どこか信心深いこの一家を端から見ていると、恵まれ無いこの黒人青年を迎え入れる事で、(神様からの)何らかの“見返り”を求めているんじゃないか?と勘ぐってしまう位だ!
何だか山田洋次監督作品を観ている様なお尻にムズムズ感を感じてしまった。
その“お尻ムズムズ感”は、作品の随所に表されている。あくまでも主観的に…と、断っておきますけど…。
人種の違い(白人意識の優越感?)もそうなのだけれど。例えば、同じセレブなマダム達との会合らしき集まりの時に、黒人の青年を預かっている事を話題に、「また寄付金を集めましょうよ」等。良い人達・良い一家として、その自己満足っぷりがちょっと気にならないて言ったら嘘になってしまう。
中盤でアメフト部に入り、プレーに参加しながら何も出来ずにいるのを見て、「家族だと思いなさい!」と言う場面。
この《家族》のキーワードは、特に後半にかけてかなり強調されて来るのだけれども。どことなく“愛国心”に繋がるところが有って。何だかそれって、アメリカ映画界では、過去に《国威発揚》を歌い文句にして、何度となく用いられて来た手法なだけに、ある種のきな臭さすら感じてしまった…。
尤も実話が題材で、本物の映像が最後に紹介されるだけに。本人達にはそんな意識は全然無いのでしょうけれど…。
(2010年3月15日新宿ピカデリー/スクリーン1)