「残念な清朝銭の、どアップ」武士の家計簿 桐野とんぷくさんの映画レビュー(感想・評価)
残念な清朝銭の、どアップ
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原作・磯田氏のファンで、主演陣の堺雅人・仲間由紀恵も大好きなので、期待して拝見。
加賀100万石の財務を握る、藩の中枢を占める上級武士一家の家計が、実は火の車。
家督を継いだ主人公が、これをユーモラスに立て直していく。いかに息子に家業を継がせたか。「昔の武士の厳しいしつけ」も見どころ。
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全体としては、楽しくみることができたのであるが、1箇所だけ、きわめてザンネンな場面があった。
映画の始まりから1:27-35ごろにかけて、父子の葛藤を描いた山場のひとつ(「四文銭の教え」)が描かれ、その中で、当時のコイン「穴銭(あなぜに)」が画面いっぱいに大写しになる場面が2度ある。そのうち1回が、日本の銭(寛永通宝)ではなく、隣国・中国(当時は清国)の銭なのである。
清朝銭は、表裏のうち一面に漢字で「年号2文字と"通宝"」、もう一方に満洲文字で「boo + "(生産地)"」が記されている。この、清朝銭の「boo」字が、息子の直吉のてのひらで2秒ほど大写しになるのである。
息子の年齢から考えて、この場面は1850年前後、このころの銭は、国産の「寛永通宝」ばかり、銅銭・鉄銭(1文銭)、真鍮銭(4文銭)の3種が入り乱れて流通していた時期のはず。
問題の場面にうつった銭が真鍮銭(五円玉と同じ材質の黄色い金属)ばかりだったのは良いとしても、せめて清朝銭は、文字が映らないよう2枚目より下で使い、てのひらの上で1番上に乗る銭は、寛永通宝をつかってほしかった。
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