ジーン・ワルツのレビュー・感想・評価
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ワンメータ
まるでホラー映画が始まるかのような冒頭部分。帝王切開手術で母親を死亡させたとして大森南朋演ずる三枝医師が逮捕される。一方で、不妊治療のスペシャリスト曽根崎(菅野)は「生命の誕生はそれ自体が奇跡なのです」と講義する。
閉院間近のマリアクリニックの妊婦4人。いつも流産してる荒木浩子(南果歩)39歳、堕胎希望の青井ユミ(桐谷美玲)20歳、経済的事情で中絶を考えてる甘利みね子(白石)27歳、双子を顕微授精で授かった山咲みどり(風吹ジュン)55歳だ。病気で引退の三枝茉莉亜院長(浅岡ルリ子)は逮捕された大森南朋の母親。最後の4人をしっかり見守りたいと願う三枝と曽根崎・・・しかし、曽根崎は明らかに50歳を越える妊婦がいることに代理母出産の疑いを持たれるのだ。曽根崎は清川(田辺)と過去に関係もあったし、子宮頸がんのため卵巣摘出手術を彼に頼んだという過去もあったのだ。
甘利夫妻の経済状況、旦那が派遣打ち切りで苦しいということ。かなり現実に即したシビアな内容だ。しかも、胎児は無脳症。その悲しい現実であっても、5分間だけ生きたという夫妻の闘いを青井に教えると、彼女は産む決意をしたのだ。
山咲は曽根崎の実の母親だというサプライズ。しかも自分の子どもを代理出産させようというショッキングな展開。清川は体制側で改革したいという夢を持っていたが、大学教授の屋敷(西村雅彦)の曽根崎つぶしという命令を受ける。そんな状況下で、曽根崎は清川に帝王切開を依頼するのだ。代理出産の件の返答次第では断ろうとしていた矢先、折しも大型台風に見舞われ、分娩器材も壊れ、医師も足りない最悪の状況となり、他の青井、荒木も陣痛が始まってしまう。3人の患者、しかも医師が足りない・・・そして究極の選択、死期が迫る茉莉亜先生にも手伝ってもらったのだ。
前半はすごく良かった。産婦人科の抱える問題・・・1万人に1人という難病だったのに、不当逮捕された医師。何でも裁判沙汰にしてしまう風潮のため医師の減少。不妊のための代理母の問題。経済状況のため中絶を希望する夫婦の問題などなど。後半ではそれらすべて放り投げして、新しい命の誕生を感動的に描くだけ。とても残念なハッピーエンディング。菅野、田辺の演技もイマイチ。他の役者がかなりいいので、これも残念。注目すべきは白石美帆と桐谷美玲。
それにしてもタクシー料金がワンメーターかどうかでその日の運を決めるなんてのはなぁ。いい迷惑や。
ある意味パニック映画。
サスペンスと謳ってはいますが、医療ドラマとして観た方が肩透かしを食らわなくて済みました。話が大胆過ぎてリアリティに欠けるからです。
母親に反対されながら父親のいないこどもを産むギャルユミ。経済的な背景も見えず、「奇跡」と、きれい事だけでこどもを産んでは先行きが不安です。
母親に代理母を頼むクール女医理恵、自分に置き換えて考えると、なんだかちょっと、、、代理母問題も最終的にも有耶無耶になった感じで、釈然としないままでした。
終盤、台風で助産師が来れず3人の妊婦が同時に産気づく辺りなんかは、もうパニック映画でした。病床から復活するまりあ先生が超クール。
映画的。あまりに如何にもな展開で、なんだか笑ってしまった。
でも、そんなことは置いといて、
出産って不思議だなあとか、生まれてくるって奇跡なんだなあとか、すごく素直に入ってきました。
「いやいやいや」って突っ込みながら泣いちゃう、みたいな感じです。
こどもがいない私でさえこれだけジーンと(駄洒落じゃないです。ガチです)しちゃうのですから、お母さん方は号泣だったんじゃないかなと。
でも、大森南朋はどうなったんでしょうか。ラスト見当たらなかったんですけど、、、。
あ、あと特典映像のドラマが、もう、泣いちゃうホラーです。
すごいいい話。
命って・・・
本当に大変なんですよ、産婦人科界。イレギュラーなお産や悲しい思いをしている女性って本当に多いんです。映画のように幸せな気持ちで終われる内容ではありませんが、子どもを産むことができない女性や病気の子どもがお腹にいる女性には有りな映画なんじゃないかなと思いました。
皆元気に生まれて、幸せに育ててもらえればいいのにね・・・
親になること。
海堂尊の医療ミステリーは映画やドラマで観てきたが、
今作は色合いの違うヒューマンドラマという仕上がりで、
あまりミステリーにはなっていない。
先日観た「うまれる」によく似た、産婦人科の話になるが、
今現在の法律では代理母出産は○×…というのも含めて、
勉強にはなった。でもとどのつまりは、赤ちゃんが欲しい。
自分達の子供が…。と切に願う夫婦の前に立ちはだかる
不妊、婦人病、染色体異常、などの問題に今後の医療は
どう対処していくべきなのか。ということなのだろうと思う。
今の日本の法律を変えるのはかなり難しいようだ。
菅野美穂が演じる曾根崎理恵という医師は、
自身が勤めるマリアクリニックで、ある疑惑を持たれている。
彼女の講義を聞いていると、確かに出産への意志がかなり
強固なものであり、何かあるのだろうな…というのに気付く。
子供を持ちたくてもなかなか恵まれない夫婦や、中絶希望の
ヤンキー女子、かなりの高齢出産、とワケありの患者ばかり
が訪れているそのクリニックに隠された謎とは何か…。
原作ではこの主人公はもっと冷徹で合理的、あまり感情の
行き来が描かれていないそうだが、映画版ではなかなか
そのあたりを巧く見せていた。核となる高齢出産の女性が
実は誰だったのか。というのを中盤でネタばらししたうえで、
話をさらに広げている。理恵の辛い過去や、上司の清川との
関係も段々明らかになってくるが…。
扱われているテーマは、記憶に新しい妊婦たらい回し事件、
実母を使った代理母のニュースなど、リアルに迫っているが、
それらをどう変えていくか(今の状態を)という挑戦らしい。
体制の内側から、外側から、理恵の計画はそういうことらしい。
どんな治療を施し、夫婦で力を合わせ、他人の力を借りてでも、
欲しいものは欲しい。という強い熱意はとても分かる。
でもその半面、子供が生まれることは奇跡であって欲しいと、
やはりそんな風にも思ってしまうのだ。
そのことだけに何年も月日を費やし、夫婦で疲れ果ててしまう
生活というのは、私には見ていて辛かった。
子供のいる私には、簡単に分かりはしない苦労に違いないが、
でも、夫婦ってそのためだけに存在しているんじゃないはずだ。
今作でも描かれる父親のいない子供を出産した女の子にしても
これからの生活の方が、ずっと長く大変なのである。
産めば幸せ=これには違いないが、ただそれだけではないと
いう決意、のようなものが今作で描かれればいいのにと感じた。
そんな意味では一組、難病胎児中絶を決断した夫婦の内情が
他とは違ってリアルに胸に響いた。こんな思いをした夫婦には
命の尊さがどれだけ強く刻まれることだろう。その奇跡や尊さが
生きていくためにどれだけ大切になっていくか。が感じられた。
そして理恵の母親。さらにマリア院長。
彼女達の決断は(良い悪いを別として)子供を持つ全ての母親に
通じるものを感じた。自分の命を賭してでも守りたいものが何か。
ミステリーとしてはいまいち、やはりドラマとして観るべきか。
(浅丘ルリ子はさすがの厚化粧^^;ながら、見せ場を奪う名演技。)
悲しき七三分け
「チーム・バチスタの栄光」で知られる海堂尊原作の医療ミステリーを、「NANA」の大谷健太郎監督が映画化。
「命とは」「出産とは」この2つのテーマを軸に、菅野美穂演じる産婦人科医が仕掛けた秘密を解き明かすと共に、出産を前に戸惑う4人の女性の戸惑いと苦しみ、そして希望を描き出す重厚な作品。その背景に海堂作品に付きまとう医療への不審、抵抗が加わり、何層にも入り乱れるミステリーが展開されていく。
だが、そうかといってこの作品を手放しで傑作と賞賛することが出来るかと言われると、そこは大いに困惑せざるをえない。何故か。物語全体に漂う消化不良の不快感が、いくら拭っても拭っても消えないのだ。前衛舞台の台詞回しの如く耳障りな会話の応酬。肝心の手術シーンに流れる怠惰な会話。いらない間。原作の中でこそそれらは活きたのだろうが、果たして映像に置き換えた上での効果を考えたのか。
そう、原作のもつ良質なエッセンス、要素を丁寧に抽出してこそ映画として完成するはずの世界が、何とか物語を無駄なく繋げようと原作の台詞を無理に引きちぎり、取って付けてしまったような乱雑な歪さが鼻につく。「ラフ」のような良質かつ瑞々しい作品を作り上げる技量を持つ大谷監督と、数々のテレビ、映画で活躍する林民夫脚本のチームならここまで適当な作り方はしないはずだが、原作が生まれでてからそれほど時間が経たない、今このときの映画化。田辺誠一にキュートな七三分けをさせて可愛く見せても、見切り発車の面は拭えない。
それこそ、産みの苦しみを逃げようとはしていないか。単なる痛み回避のための帝王切開ならば、こちらから願い下げである。
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