劇場公開日 2010年2月19日

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「メリル最高!人生と結婚生活がとても素敵に見える一本でした。」恋するベーカリー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0メリル最高!人生と結婚生活がとても素敵に見える一本でした。

2010年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 何と言っても本作で、メリル・ストリープが素敵です!
 『マンマ・ミーア』から、メリル・ストリープのファンになりました。『ジュリー&ジュリア』では驚異的な演技力を見せつけられました。本作では、彼女の人間味や暖かさを感じたのです。メリル・ストリープが出演しているだけで、画面がほのぼの暖かく見えてくるから不思議です。

 本作も、離婚した夫なのに、やけぼっくりに火がついて「不倫」してしまう話。夫のジェイクには若い奥さんと年少の坊やがいるのにです。一つ間違えば、かなり深刻な展開になるのに、全編を通じてほのぼのさせてくれるのは、やはり彼女の人柄ゆえのものではないでしょうか。

 いろんな恋愛映画が毎月のように公開されていますが、別れ話はあっても、本作のように別れて10年経った元夫と出会い、情事を重ねてしまうストーリーはこれまで皆無でした。そんなあり得ない話を、的確な伏線を張り巡らしながら、時にコミカルにつないでいくストーリーの出来が凄く良かったです。

 皆さんなら若い奥さんと、60歳近い古女房では、絶対若い方がいいと思うことでしょう。離婚した頃のジェイクもその時はそう考えたのです。だけど、10年の歳月のなかで、いつしか若妻は子育てに忙しくなり、自分を粗大塵芥のようにぞんざいにあしらうようになってくる。食事も子供の好みに合わせて、全く自分の好みや健康に気を遣ってくれない。そうなると思い出すのは、別れた女房の細かな心遣いだったのです。

 ひょんなことで、その別れた女房と10年ぶりのセックスにジェイクが燃え上がったのは、恋愛感情というものではなかったのではないでしょうか。それはむしろ15年間も人生を共にしてきた伴侶と培ってきた家庭愛を呼び覚まされたからだと思います。

 この作品を見ていると、女性の魅力は若さだけではないことを思い知らされます。そのことを、ジェーンに恋してしまう建築家で初老のアダムは、年齢とともに培ってきた魅力なんだと口説くわけです。
 画面で見せるメリルの包み込む優しさは、人生経験の賜物なのでしょう。いろんな艱難を越えてきた女性だからこそ、一緒にいて安らげる理想のパートナーに思えてくるのだと思います。

 でもジェイクは、ジェーンとの情事を重ねつつも、今の家庭を壊すことはありませんでした。第二子をせがむ若妻には、嫌でも夫としての勤めを果たさなければなりません。辛いですね(^^ゞそれで、ジェーンとデートの約束をすっぽかしてしまうのです。怒ったジェーン二人の関係を終わりにして、これ見よがしにアダムに接近します。

 娘の学校の卒業バーティで、この3人がハチ合うシーンが見物です。自分を無視し、アダムと親しく会話するジェーンに嫉妬の炎をメラメラと燃やすジェイクの表情にご注目あれ。とっても気持ちがこもった演技でした。
 ほぼストーカーのように、ジェーンにつきまとうジェイク。彼の家庭事情が明らかにされているので、その涙ぐましいジェーンへの求愛ぶりに、感情移入してしまいました。

 それでも、ジェーンを求めば求めるほど、アダムと親密になっていくのです。やがてジェイクの浮気は、若妻にバレてしまい、思いを決したジェイクは、ジェーンの家へアポなしで押しかけるのです。
 このとき、アダムにも二人の関係を知られてしまうことになるのですが、そのきっかけが大傑作!余りにもトンデモな経緯に、大笑いしてしまいました。
 ジェーンの家に結集していた子供たちにも、宣言するジェイクであったのですが、10年前に捨てられたという恨みを持つ子供たちは、あまりの身勝手なハパの物言いにも呆れるばかり。

 さあて、アダムとジェイクと、若妻も絡んだ4角関係は最後にどうなるかは、画面でぜひ感動のラストをご覧あれ!
 人生と結婚生活がとても素敵に見える一本でした。

 追伸
 タイトルの、『ベーカリー』はどうでもいい内容でした。美味しい物はそれなりに出ては来ますが。

流山の小地蔵