劇場公開日 2011年1月15日

「久々の純愛映画にほろり、人の幸せについて想いを馳せる」僕と妻の1778の物語 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0久々の純愛映画にほろり、人の幸せについて想いを馳せる

2011年11月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

年齢を重ねたせいか、やたら涙線が緩んでいる私には闘病記物は最も苦手な部類の映画である。しかしこの映画は例外だ。最も笑顔の似合う女優№1と自分勝手にランク付けをしているのだが、その№1で大好きな竹内結子が主演しているのだ!
映画館では見逃してしまったけれど、DVDで観ない手はない!観てみると彼女の魅力満載!ファンであるから前半のタルく、尺の長いのもなんのその。
草なぎもこう言うおたくっぽいキャラを演じさせると人の良さそうでぴったりとはまった気がする。併せて、脇を固める谷原章介、大杉漣、吉瀬美智子、そして竹内演じる悦子の母親を演じる風吹ジュンは出番こそ少ないがまた良いのだ。隣に住む大家さんなのか解らないが隣のおばあちゃんに、佐々木すみ江と言う配役がとってもこの映画を支えてくれていた様に思う。これで、涙線の緩んでいる私も安心して映画が見られたのだ。
話しが余談になり横道に逸れるのだが、夏頃に、作家の曽野綾子氏の講演を聴きに行った事があるが、彼女いわく作家とは、毎日毎日ひたすら原稿を書き続ける地味な作業を続けなければ出来ない職業で、それは丁度レンガを積み上げるレンガ職人に最も似ていると言う話しをされていた事を思い出した。毎日毎日コツコツと書き続ける事が出来れば、その結果必ず誰でも有る程度は文章力が着いてきて自然とプロと呼ばれる作品が描けるように成れると言う、しかし人はその毎日来る日も来る日も、只黙々と同じ作業を続ける事をするのが、最も困難でその困難な作業を続けられる事をその道のプロと呼ぶそうである。非常に説得力が有る話しだと感激したのだが。さてこの悦子の為に、作家である夫に出来る事は何が残されているのか?余命1年と死の宣告を受けた若い妻とその家族の苦悩は傍目にも痛々しい。しかし悦子は辛い日々でありながらも余命生活の質を上げる事に集中して生活をして行くのだ。ラブストーリーの書けない作家が実人生ではラブストーリーを貫くのだ。命ある者には必ず死と言う淋しい別れが巡って来る時がある。それはどんな人にも時間の差はあるものの、平等に起きる現実なのだ。避けて通る事が出来ない運命でも、毎日毎日短くなるその残された日々を少しでも、笑いながら暮す事で病状を回復させられる事が出来たらと信じる夫と妻の綱渡り人生を二人が生きて歩んで行くのは、果たして本当に悲劇なのだろうか?確かに常に死の恐怖と共に生きる事は辛い。しかし、最愛の妻との濃密な関係を築く事が出来たこの4年と数カ月の日々こそは2人にとり辛い日々と同時に幸せな日々で合ったに違いない。私も家族を病気で亡くした経験があるが、その看病の日々を今振り返ると決して辛い日々ばかりでは無い様に思う。共に暮らす家族でも、知らない事は山程あるものだ。その知らないお互いの部分を少しずつでも、お互いにお互いの理解を深める為への時間へと昇華させるチャンスを神さまがいるとしたら、用意してくれた時間なのかもと今でも信じて感謝している。人間とは明日はひょっとしたら死ぬかも知れないと言う恐怖と緊張の中で生き続ける事は困難を伴うので、決して自分や家族の死はずーっと常に先にあるものと考えがちであるけれど、先である保証など何の根拠も無い事だ。この映画はそんな私達の流されて生きる日常に家族を愛して生きる事の素晴らしさと重要性を今一度呼び醒ましてくれる。時間は止まらない。家族との時間も毎日レンガを積む様に大切に築いていくように心がけたいものだ!

ryuu topiann