ヤギと男と男と壁と : 映画評論・批評
2010年8月17日更新
2010年8月14日よりシネセゾン渋谷、シネ・リーブル池袋ほかにてロードショー
キテレツな内容から「毒」が浮かび上がるスカシたコメディ
フォースの力を使った、その名も「ジェダイ計画」として編成された米軍特殊部隊の顛末を綴ったキテレツなコメディだ。ウソのようなホントの話らしいが、ノンフィクション小説「実録・アメリカ超能力部隊」という原作が存在しているとはビックリである。
これは観客とがっぷり四つに組める映画ではない。どちらかというと全編に「スカシの感覚」があふれていて、おかしな方向へと不思議な磁力で引っ張ってくれる作品だ。言語明瞭意味不明瞭。映画全般がそんな感じだ。ものすごくポップでレトロなボストンの「宇宙の彼方へ(モア・ザン・ア・フィーリング)」をメインテーマとして使っているように、口あたりはやさしいが、その内奥には得体の知れない「毒」が潜んでいるヘンな物語だ。
その毒をふりまく中心人物が製作・主演のジョージ・クルーニーだ。自らが物語世界へ軽々と誘う「狂言師」を演じ、ジェフ・ブリッジス、ケビン・スペイシーらのクセ者役者から快活な笑いを引き出している。さらに撮影監督がロバート・エルスウットだったりと贅沢なスタッフ&キャストを召集しているのだから、スターパワー恐るべし。よくぞ企画が実現したものだ。
キテレツな内容だが、映画全体で「おいおい、アメリカはなんでこんなにバカなのか?」と疑問符を投げかけている。敵がアメリカという国家なのが、反骨の男クルーニーらしい。
(サトウムツオ)