「時代ものの魅力はもどかしさ」最後の忠臣蔵 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
時代ものの魅力はもどかしさ
時代ものは好きだけどなんとなくハズレっぽいと思い長らくスルーしていた。田中邦衛さんが亡くなった時に追悼で観ることにしたのだが、これは当りだったね。
武士ゆえのもどかしさ、武家ゆえのままならなさに身悶えしながら観るのは至高の時間だった。
当時の価値観を今の価値観で鑑賞するわけで、現代なら何てことない、障害なんて1つもない、スゴく単純で簡単なことが上手くいかない時代ものを観る喜びに満ちてたね。
更に終盤では、大石内蔵助がしたこと、孫左衛門がしたことが渦になって押し寄せてくるような感動のラッシュだった。
最初の目的だった田中邦衛さんが終盤まで出て来てなかったんだけど、面白くて出てくるまで忘れてたよ。出演シーンは1カットだけだったけど、なかなか印象的で良かった。感動の締めくくり役みたいな感じかな。
物語のほうは、最初に登場する佐藤浩市さん演じる吉右衛門が、辛くままならない孫左衛門の心を二度ほど救って、要は説明セリフなんだけど、他の場面で余り語らないせいで効いたね。
それと人形浄瑠璃ね。突然歌い出すミュージカルの如く、今の状況や心情を代弁してくれて、これまた要は説明シーンなんだけど、一応比喩的な使われ方をしているから嫌みじゃないし、分かりやすかった。
中盤過ぎから「浄瑠璃キタ!」と笑えてしまったけれど、イイ塩梅のアクセントとして良かったと思う。
あとはキャストだね。
可音を演じた桜庭ななみはかなり良かった。笑顔で涙を流すところが特に良かったと思うね。
時代もののもどかしさは相反する感情である笑顔と涙だと思うんだよね。それを巧みに演じられていたのは褒めるべき。
それともう一人、孫左衛門を演じた主役の役所広司さんね。
涙をたたえた瞳が孫左衛門の中の色々な感情を雄弁に語っていたと思う。
押し殺した発散されることのない想いが、観るものには溢れ出ているように見える。素晴らしいね。
メチャクチャ最高ってほどではないけど、こんな感じの時代ものが年に一回くらいは観たいよね。
ああ、それが地上波の年末時代劇なのか。テレビは観ないから今もやってるか知らないけどさ。
子どもの頃は何で毎年やるんだ?と思ってたけど需要あるんだな。自分もそれになってしまったわけか。でもできれば映画で頼む。
あと、ななみはもっと映画出て。
