告白(2010)のレビュー・感想・評価
全74件中、1~20件目を表示
これぞ復讐、胸糞悪いけどスッキリ!
これぞ復讐、胸糞悪いけどスッキリ!徹底的に相手を許さず、修哉と直樹を追い詰めていく森口の復讐が面白かった。
復讐する作品って大抵相手を殺して終わる作品が多い。でも相手により苦痛を与えられるのは、その人の大切な人を殺すことだよね。本人を殺しちゃったらその一瞬は気が晴れるだろうけど、相手の反応を見ることが出来ない。
俺だったら「自分と同じ気持ちを味わわせてやりたい」って思う。相手の絶望した表情を見たいし、生きたまま地獄を味わってもらいたいから。復讐相手を殺して終わる作品が多い中、相手の大切な人を殺して復讐相手は生かすというパターンは新鮮だった。復讐のやり方としては俺はこっちの方が好き。このパターンの復讐劇をもっと見てみたい。
シュウヤはあの後、森口の娘を殺した罪を猛省したに違いない。すんごいマザコンだったから立ち直れなくて自殺する可能性もありそう。「私にも聞こえました。大切な者が消える音、パチンじゃなくて…ドッカァーンって!」さいご修哉にはなった森口のセリフ。静かなテンションから「ドッカァーン!」って急に声を荒げて楽しそうに言う森口怖かったなぁ…。
復讐する母親
娘を殺された母親が犯人の生徒に復讐する話
それぞれの視点から物語が語られ話が進み心情がみえてくる。主観で語られているため、何を信じるかは鑑賞者にゆだねられる。最後は爆弾で死のうとした生徒の裏をかき生徒自身の手によって母親を殺させるEND なーんてね
役者の演技や演出も作品に雰囲気に合っていてよかった。
唖然茫然
告白。
当時本屋大賞受賞したとかで騒がれてました。
いつもなら手を伸ばすのですが、告白は未見でした。
でも、後味の悪い小説だ、という噂は聞いていました。
そして、映画化。
あの不幸の連続の重い重い松子の一生をなんとも楽しそうに?映像化した中島監督。
当時CM見て、後味の悪い悪い告白を、今回もそんなライトな感じで映像化したのかな?
とだまされた人がここにいます(汗
あの悪意の塊が、魑魅魍魎がうごめく?映画のワンシーンを切り取って繋げたらあ~んなCMになるんですね!感心しました!
そして、レビューを見てからいくべきだったと初めて後悔しました…。
この日、映画観た後そのまま本屋へ直行し、原作一気読みしました。
もう、中島監督の作ったこの「告白」という映画には何の文句もありません。
役者もベテランも生徒たちもすべて素晴らしい。
本当に見て損はないです。(後悔はするかも)
色々思うところはすべてこの原作にあります。
殺された少女の父親は聖職者として天国へ旅立ちました。
復讐では何も生まれない。生徒は立ち直れる、と。
しかし母親は、そんな父親の思いを全く汲み取るどころか、おそらく死んだ娘も引くくらい、突き抜けた素晴らしい復讐を遂げました。
あの人この復讐遂げてこれからどうやって生きていくつもりなんでしょうか。
目には目を。歯には歯を。しかし、目に針さして、歯をペンチで抜いちゃいました。
中二病の彼らは大人をなめすぎてましたね。
敵に回してこんな怖い大人いません。最強です。
善意の後輩教師も犯人以外の自分の生徒もぜ~んぶ復讐の道具にしちゃいました。
そして、犯人の少年ABの母親はもっとも使える復讐の道具としてしまいました。
色んな人が、彼女の復讐劇のため新たに命を落としました。
死んだ愛娘以上の人間の数ですよ!
映画では原作以上に、人間がモノでしかない、命の軽さが十分伝わってきました。
そして、原作には最後の「な~んてね」がないのです。全く空恐ろしいです。
あの「な~んてね」の一言で、いいようにとらえて映画を観終わることができた人もいるかもしれません。
ラッキーです。
映画の森口先生は、自分に更生云々、などといえる人間ではなくなったことを認識しています。
あの「な~んてね」は私はそう取りました。
原作の森口先生は本気であの復讐が彼の更生の第一歩とか言っちゃってそうなんですよ…。
こんな大人が子どもを育ててたら、死んでしまったかわいいあの子も、もしかしたらきっととんでもないモンスターに育ってしまったかもしれません…。
子どもを殺されたというだけであんなに人間堕ちますかね。
もともと素養があったとしか思えません。すごいです。
とにかく、よくこの小説を映画化しました。あっぱれです。
これを問題作!衝撃!と思える自分は平和なんだと思いました。
バトル・ロワイヤルにも似た、学園物の胸糞映画。不完全な自己を抱える...
バトル・ロワイヤルにも似た、学園物の胸糞映画。不完全な自己を抱える若者の歪みがもたらす犯罪、それを助長する周囲との関係、母親たちからの虐待、溺愛、無関心などが複雑に絡み合って、モンスターが出来上がる。
少年A、少年B、少年Aと仲良くなる少女、少年Bの母親等、それぞれの視点の告白で、見えない部分があぶり出されていくのが面白い。最終的には、少年Bとその母親、少女も死に、少年Aの母親も少年Aが作った爆弾のボタンを自ら押して、死に追いやるという復讐が完結する。
弛緩の無いストーリー、次から次へと連鎖していく悲劇と犯罪という意味では秀逸。しかし、胸糞が悪くなることだけは確かです。
湊かなえらしい作品。
湊かなえらしい、残酷で暗い作品。原作も読んだが家内と観てみた。少年AとBには同情の余地はなく、改めてこういう作品を見ると少年法はさっさと廃止してもらいたいと心底思う。松たか子は適役だったのでは?いい味を出している。芦田愛菜という女優が子役の時は知らなかったのだが、可愛らしいと思った。エンドロールで能年玲奈の名前を見つけて巻き戻してみたのだが家内も僕も発見出来ず。
最高に練られた復讐劇 えげつないほどに面
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校の先生の松たか子が愛娘を自分の生徒2人に殺される。
ただ注目を浴びたいとか、極めてエゴな理由からの犯行だった。
ここから松たか子の恐ろしい復讐劇が始まる。
それはまずはエイズの菌をソイツらの体に入れることから始まった。
(これについては精神的に追い込むために口で言っただけっぽいが)
1人の生徒にはクソ真面目な自分の後輩教師を利用して精神的に追い込んで行き、
頭がおかしくなって自分の母親を殺すという結末となった。
もう一人、首謀者の生徒は、注目を浴びるために学校爆破事件を計画するが、
それをソイツのHPで事前に知った松は、仕掛けられた爆弾を予め奪っておき、
マザコンであるこの生徒の母親のところに仕掛ける。
そうとは知らない生徒は起爆し、自分の手で母親を殺すハメになってしまった。
また唯一コイツを理解してくれた女生徒も自らの手で殺すハメに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いやあ、これはすごいインパクトの映画だった。
そして見事なくらいに最後に全てが1本の糸でつながる。
結局は松たか子が全て計算づくで、裏で糸を引いていたというもの。
極端に言えば、学校の教師なんてこんなものだろう。
自分の一人娘を面白半分で殺されれば、犯人を殺してやりたくなるはず。
この教師に関してはそこに一切のモラルは無く、復讐のために命をかけた感じ。
実際にラストシーンの後は罪に問われることになるだろうしね。
(少なくとも生徒の母の所に爆弾を仕掛けたのは犯罪)
結局、2人生徒側からしたら、殺されるよりも悲惨な結末になったと言える。
それが松のイメージした最高の復讐だったのだろう。
それにしてもラストシーンの松たか子の「なーんてね」の時の演技は、
ゾーッとするものがあった。人間の持つ怖さを描いた素晴らしい映画だった。
数年前に視聴済みだったが、機会があったので再度視聴。 森口先生が失...
数年前に視聴済みだったが、機会があったので再度視聴。
森口先生が失ったもの、守りたいものと奪いたいもの。そこに注目してみた。
森口先生の復讐は本気でイジメも想定内。
北原美月はイジメに加担しなかった。言い換えれば森口先生の味方をしなかった。
森口先生の味方をした生徒達は渡辺修哉の爆弾による大量殺人事件から守られた。
考えさせられた。
もし、失ったら狂う程に愛する人が殺されたら、自分ならどうするのだろう。
芦田愛菜はすぐわかったが、能年玲奈が出演していたのは気付けなかった。
BGMもテンポも良く、演出も素晴らしかった。
現代のいじめ、性的虐待、差別は全く別の所にある。
かの金属バットの事件を振り返ると、サイコパスなマザコンが犯す犯罪の種類が全く違う。彼らに出来る事は自壊すること位。勿論、稀に周りを巻き込んで犯罪を犯すことはあろうが。
現代のいじめ、性的虐待、差別は全く別の所にある。
寧ろ、この状況を傍観する側に日常生活を脅かす問題がある。『絆』で結ばれた家族に問題が無いと思う所に寧ろ問題がある。
少年法の改正目的の為だけのプロパガンダ映画として私は見る。
原作がホラーだけを追ったライトノベル級の小説であるだけでなく、頭に逆上せた演出家が思わず作ってしまった駄作と思うが。まぁ、ご飯を食べる為には仕方ないのだろう。大変に残念だ。問題が重いだけに人の命は大事にしてもらいたい。ただでさえ、火曜日ごとに殺人があって、崖で犯人が2時間で自決するのだから。もう少し、救われる何かが見たいものだ。
松たか子さん!!
もう、初っ端から最後まで、松たか子さんを全面に映画を織り込んでいくんですね。正解でした。
母性と母性と母性の怖さ、堪能させていただきました。
そこだけおっきな声で"ドッカーン"とか言われたから、オシッコチビりそうになりました。
男ってなんて愚かで脆弱な生きものなんだ。母性より怖い物なし、松たか子さんより怖い物なし。
決して戦っちゃダメだ。ましてや、あんなに真っ向勝負挑むなんて狂気の沙汰。ひたすら耐えるか、後ろ振り返らずにすぐ逃げてー。
ということで、何気に終わりまで飽きさせずに観させるところ、この監督さん、やり手ですね。
復讐者の真黒な悪意が犯人を蹂躙しつくす快感
2009年本屋大賞受賞。
湊かなえの同名小説の映画化。
【ストーリー】
学級崩壊した中学のクラス。
その担任教師が辞任し、最終日に放った言葉はこうだった。
「このクラスには、私の娘を殺した犯人がいる。私はその二人にエイズで死んだ夫の血を混ぜた牛乳を飲ませた」
静まり返った教室で、今までになく行儀よく座る生徒たちの間を、教師は犯人たちがどんな手口を用いて娘がどんな風に殺されたのか、その経緯を淡々と説明しながら歩く。
ついさっきまで粋がりたおしていた生徒らが、教師の底なしの悪意に囚われ、拷問の様に重い空気を味わいながら、息を殺してその言葉をただ聞く。
ーーそして犯人たちは不登校になった。
共犯の少年は教師によって追い詰められ家庭ごと壊された。
だが主犯の少年はさらなる犠牲者を求め、もっと大きな凶悪犯罪を計画していたのだ。
これは中二病のサイコパス少年を、彼の悪行によって悪魔のような衝動に開眼した純度100%本物のサイコパスが、その全てを蹂躙し破壊し尽くす物語です。
動機は殺された娘の復讐ですが、犯人二人とその周囲にいたワガママ放題だった生徒たちを、その後も束縛し続ける、静かな語り口ながら生々しい呪いの言葉が強烈に耳に残ります。
復讐の起点となったホームルーム以降、犯人や他の生徒たちがどう壊れていったかが、克明に描かれるのです。
そして思春期の幼稚な信仰を叩き潰し、ラストに相手の一番大切なものを奪う瞬間の、ものすごい気持ちよさ。
心の底からざまあみろと思わずにはいられません。
『すでに終わった犯罪』として語られる、犯人への復讐の一部始終。
感情を織り交ぜない松たか子の平滑な声が、クライマックスへの期待をゾクゾクするほど煽ります。
全てを失い、犯人が絶望してひれ伏したところに、あの最後のホームルームで教室をめぐった歩調と同じ、ゆったりと一歩また一歩と近づいてくる教師の、悪意満点のラストの言葉。
犯人の大切なモノを、完膚なきまで蹂躙しつくした復讐者の天才性。
重ねて書きますが、復讐が成就した瞬間、ものっすごく気持ちよかったです。
嫌ミス(胸糞)の女王と言われた作者の、衝撃のデビュー作。
ぜひぜひご覧いただきたい逸品です。
これ好き!
松たか子さんじゃなければ出来なかったと思う。
最初の30分、生徒に自分の子供が殺された経緯を事細かに話自分の旦那がエイズだということも告白し、1人喋り続けるというシーンですが目が離せない。
松たか子さんしか出ていない状況と教室という変わり映えのない場所でただ喋ってるだけなのに、恐怖と刹那を感じるシーンです。
途中松たか子さんが出なくなり新任教師と殺人犯にクローズアップされますがラストはスカッとする展開に。
マザコンの殺人犯が自分の母親を間接的(?)に殺すシーンと松たか子の頭の回転の良さが圧巻。
本当に見て良かったです。
これを観るにはちょっと辛い
このタイトル公開されていた時から気になっていました。でも。怖くて 10年以上経っても怖いです。命を軽るんじている中学生に怖さを感じました。松たか子の教師の役も凄かったし生徒役の人達もすごい。教師の子どもを意味なく殺ろす中学生 殺された子どもの教師は子どもを失った哀しみを復讐という形で話が進んでいく。
精神的に生徒を追い詰めていく。
その様がスゴイ 殺された側にしたら不本意で許される事ではない。松たか子の告白が淡々と始まって最後は告白に凄みがでて狂喜となって終わる。
精神的に追い詰められました。怖くて重い作品です。
映像化されることでより毒々しさの刺激が強化
先日、原作の方を読み返したので、改めて映画の方も見直しました。
原作の方で、散々感情的な毒々しさは感じていたので、映画自体からストーリー的な恐怖感を新たに感じることはなかったのですが、映像化されることでより毒々しさの刺激が強化された部分は多々ありました。
原作にはないシーンですが、目の裏側に森口先生の「どっか~ん」の映像が張り付いて、『告白』=『どっか~ん』くらいのインパクトで残っています。
所々、ストーリーも原作との違いはありますが、辻褄合わせ程度のもので大筋に違いはないかと思います。
強いて言えば森口先生の復讐する姿に少し罪悪感的な描写を持たせた部分はありますが、原作同様、僕の中で森口先生のスタンスは救いのない復讐という立ち位置に変化はないです。
元々、原作の中でもキャラクターの心情的な部分にはあまり入れ込めなかったのですが映画も同様でした。
きちんと筋道立てて悪事に至るまでの心理は描かれているものの、なかなか突飛な10代の過敏な過剰反応が描かれているだけに共感も同意もしかねるという感じで。
寧ろ、この原作も映画も魅力はそういった過激さを上回る描き方にあるように思います。
原作は悪意の塊を全身に浴びながらも読み切らされてしまう勢いがあって、映画の方は悪意という意図を持った映像作品を観ているような真新しさと飽きなさ。
テンポの良いカット割りと細切れで意思をもった映像の連続、いじめ、殺害、序列、アイドル、携帯メール、回想シーン、映像は時にスローに、時に景色を変えて、時にダンスで感情をデフォルメさせて、ただほとんどの映像が悪意という共通項をもって自由に編集されています。
そういったカットの連続は否応なしに映像の世界に引き込ませ、圧倒的な映画作り、というよりも映像作りの巧みさを感じました。
だからと言って、この映画が映画ではなく映像作品と言うつもりはなく、映画としての評価として、かなり際立ったセンスと巧みさのある作品だと思っています。
映画の魅力として、松たか子さんの存在感は際立っていました。
冒頭から、細切れのようなカットが続く中、淡々と変化のない口調で悪意を口にしていく姿、時間にして30分程このシーンが続きますが、ストーリーの前提条件、子供達の教室風景・人間関係、娘の死亡と殺害の状況、そして最後に明かされる復讐の宣告。
これだけの情報量を開始30分に全て詰め込んで、破綻なく、後の展開に繋いでいきます。
この構成の上手さは素晴らしいですが、やはり松たか子さんの演技があって成り立つ構成かと思います。
安易に子供達に迎合しない少し冷たさを感じる絶妙な距離感、そして娘を亡くした(というよりも殺された)憎しみを内に秘めて静かな攻撃性を帯びた語り口。
それでも言葉を崩さずに、淡々と記憶を辿り、子供達を未熟で弱い物として突き放して語っていく姿。
凄まじいですね。本当に。原作の雰囲気を踏襲しつつ、よりイメージが違和感なく映像化された最高の仕上がりです。
音楽も素晴らしい選択でした。
ノイズあり、ギターサウンドあり、ダークで、退廃的で、浮遊感のある曲が多かったイメージです。
radioheadの曲も繊細なピアノの音色がなかなか良いですが、BORISは書下ろしだったようです。
映像作家の方の音楽への知見とセンスは驚くことが多いですが、中島監督に対しても尊敬の思いで観てしまいます。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ブログの方では、ネタバレありで個人感想の詳細とネット上での評判等を纏めています。
興味を持って頂けたら、プロフィールから見て頂けると嬉しいです。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」
この映画を一言で表すなら・・・
「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」
と言えます。
いったいどこが「悲しき」なのか、「ダーク」なのか、「ヒーロー」なのか私なりにこの映画を解説しながら感想を書きたいと思います!
※ ネタバレ注意です! ※
◆ ストーリー
とある中学校、1年B組。HRの時間になると担任教師の森口悠子(松たか子)は静かに語り始めます。
「皆さん知っての通り私はシングルマザー。恋人とは結婚する前に別れました。理由は彼が過去の海外渡航歴が原因によるエイズ、家族や娘に迷惑が掛かると言い、私の元を離れていきました。」
「娘はこの学校で死にました。警察は事故死だと処理しますが、真相は違います。このクラスの中のある2人組が私の娘を殺したのです。」
「いまさら警察の検証結果を蒸し返すつもりはありません。しかし皆さんに命の重さを知ってもらう為、先ほど私は犯人AとBの2人が飲む牛乳にエイズに感染した彼の血液を混入しました。」
「潜伏期間は5年程、10数年程で死に至ります。命の重さを知るには十分な時間でしょう。」
たちまちクラスは大パニックに。恐ろしい担任の教師の告白から物語は始まり、事件に関わる登場人物の独白で物語が紡がれていき、やがて物語は凄惨な結末を迎えます。
◆ 登場人物に着目
◆ 1年B組の担任 森口悠子 (松たか子)
最愛の娘を殺された恨みから恐ろしい復讐劇を実行します。彼女は過去に生きています。後で詳しく解説しますがここにこの映画のやるせなさ、後味の悪さがあります。
◆ 犯人A 渡辺修哉(西井幸人)
クラスでも優秀な成績を修めます。中でも科学の知識は相当なもので、学生発明品コンテストに応募し入賞するほど。
しかし、コンテストに入賞しても新聞での扱いは小さなもの。それよりも同じ中学生が起こした殺人事件が紙面を大きく飾ります。
もっと大きな事を、殺人を犯すほどでないと誰も認めてくれないと錯覚し、クラスでも陰気な犯人Bに友達になろうと歩み寄り、そそのかし、共謀し、森口先生の娘を殺す計画を企てます。
修哉は「誰かに認められたい。褒められたい」事に執着しています。
◆ 犯人B 下村直樹(藤原薫)
クラスでも陰気な存在。犯人A 修哉の歩み寄りにより、心を開きます。直樹は友達になりたかっただけでした。そして友達に認められたかった一心で犯罪に加担します。
しかし修哉は友達になりたかったわけではありません。犯罪者になり、有名になりたかっただけでした。森口先生の殺害計画は大詰めの所で誤りを見せます。
修哉は直樹を「お前は出来損ないだ」と罵り、突き放します。
この一言により直樹は独断でさらなる凶行に及び、森口先生の娘を殺してしまいます。
◆ 犯人B 直樹の母 下村 優子
息子を溺愛するあまり、必死に守ろうとします。事件を事故だと思い込み、息子は悪い友達にそそのかされただけだと信じきっています。森口先生との面談でも亡くなった先生の娘に対してではなく、息子に対して「かわいそうに、かわいそうに・・・」と優しく手を握ります。
◆ 若き熱血教師 寺田 良輝先生 通称ウェルテル
森口先生が学校を去った後にやってきた1年B組の新担任。彼は修哉や直樹が殺人犯であることや、エイズウィルスが混入した牛乳を飲んだ事件を知りません。
その一件後、修哉はクラスメートから壮絶なイジメに遭い、直樹は不登校になります。
寺田先生は裏の事情を知らずになんとかクラスからイジメをなくそうと生徒たちに必死に呼びかけたり、直樹の不登校を直そうと熱心に家庭訪問を繰り返します。
一見よき先生ですがその熱意は空回りし続けます、それはなぜか?こちらも後で詳しく解説します。
◆ この映画の「父性」と「母性」に注目
◆ 犯人A 渡辺修哉(西井幸人)-悪母と父性の感じられない父
修哉の母親は科学者であり、研究職に就いていましたが、結婚を期にその道を閉ざします。しかし今度は研究職としての夢を息子に託し始めます。英才教育と言えば聞こえはいいですが、実際は幼い子供に無理な課題を押し付け、何度教えても出来ない息子にヒステリックを起こし、暴力を振るうように。
結局その家庭内暴力が原因で修哉の父と母は離婚し、修哉の母親は家を去ります。これにより、修哉は母親からの包み込むような愛情や、承認といったものが完全に抜け落ちて育ちました。そのせいで彼は誰かに褒められたい、認められたいといったことに執着していたのです。
次に修哉の父親に注目してみます。劇中では存在が薄いですが、修哉の口から決定的な一言が出ます。
「最低な凡人と結ばれ、生まれた子、それが僕だ。」
「凡人」、つまり厳格な態度の父親というわけではないが、父としての厳しい態度もなく、リーダーシップや憧れの存在になるほどの魅力を感じない父であったという事です。つまり修哉には父性が欠如していたのです。
父性とは社会のルールや秩序、良いおこないと、悪いおこないを子に教えるものです。これが欠如すると子供はやっていい事と悪い事、物事の善悪が付かなくなります。
現に修哉は動物虐待という非行に走るようになります。
◆ 犯人B 下村直樹(藤原薫) -強過ぎる母性の母と父の不在
直樹の母親、優子の独白によると、父は仕事人間でいつも家におらず、長女は既に独り立ちして家を出ています。彼女にはもう息子しかいません。それゆえに直樹を大切に思い、溺愛します。
犯人A 修哉の母親とは違い、犯人B 直樹の母親は優しさと愛情に溢れています。母性とは守る、包み込む優しさ、愛情です。
しかし「母性」が過剰に働いてしまうのも子供に悪影響を与えます。包み込むような優しさのあまり、子供が家にへばりつくようになり、社会へ独り立ち出来なくなるのです。
もし父性が機能する父親が居れば社会への船出を後押しするのですが、それも叶いません。修哉の父親は仕事人間。下村家には常に父が不在です。劇中一度も出てきません。
◆ この映画で一番父性的だった人物は誰か?
◆ 寺田先生(ウェルテル)の熱意はなぜ空回りしたか?
寺田先生は明るく、元気な性格。一般的な教師のイメージとは違い髪は茶髪で赴任当初からフレンドリーに生徒たちに歩み寄ります。
1年B組にイジメがあることを知ると必死になくそうと生徒に訴えかけたり、不登校の生徒(直樹)をなんとか立ち直らせようとクラスで寄せ書きを書いたり、みんなで書いた授業ノートのコピーを直樹に届けようと提案します。さらに直樹になんとか学校に来てもらいたくて熱心に家庭訪問を続けます。
寺田先生は持ち前の気質でクラスを一つにまとめようとするリーダーシップを持っていて、生徒たちを明るい方向へ導こうというような父性を発揮しています。生徒たちの心に響いてもよさそうですが、実際には空回りします。
それはなぜでしょうか?寺田先生は牛乳の一件や、前任の森口先生の娘が亡くなった事件の真相を知らないから?クラスの陰で糸を引いている者の存在に気づけなかったから?
もちろんそれもありますが、共感できるビジョンを示せなかったところに最大の原因があります。
寄せ書きも、ノートのコピーも、家庭訪問も、提案そのものは素晴らしいですが、生徒たちから真に共感を得ていたわけではありません。
寄せ書きは分からないように陰湿な悪口が落書きされ、ノートのコピーも提案した時は不穏な間がありました。「家庭訪問に誰か一緒に来てくれないか?」という提案にミズホが選出されますが、クラスの同調圧力によるものでした。
共感を得なければ発揮した父性も空回りするのです。
◆ 「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」とは。
◆「悲しき」「ダーク」「ヒーロー」「森口悠子先生」
冒頭、生徒たちの前で「いまさら警察が事故と処理したことを蒸し返しはしないが」と前置きした上で「教師として、大人としての責任から子供たちに命の重さを教える」と言い放ち、犯人Aと犯人Bの牛乳にHIVに感染した婚約者の血液を混入したと告白します。
クラスはパニック、森口先生はそのまま学校を去ります。
そのまま物語からフェードアウトするかと思われましたが、その後も犯人A 修哉がイジメられるように仕向けたり、犯人B 直樹を精神的に追い込むべく裏で糸を引いていました。
森口先生は「教師としての責任」「命の重さを教える」と教育者としての使命感からと言いますが、その実は復讐劇であり、れっきとした犯罪です。
森口先生は過去にフォーカスして生きているので復讐の怒りに打ち震え復讐劇を演じるのです。
私は過去に執着せずに、もっと今にフォーカスして生きればこれからの人生で自分の幸福が見つかるのに・・・・とは言えません。
なぜなら森口先生は最愛の娘を自分が担任する生徒に殺されたのですからね。
私にはそんな気持ちを無視した正論は言えません。
父性とは規律、規範を示す、裁く、という機能もあります。皮肉なことにこの物語で一番父性を発揮していたのは森口先生でした。
正義のヒーローなら悪を裁くと街や民衆に平和と秩序がもたらされますが、この映画は混沌を極めます。
私はここからの一連のシーンで「悲しき」「ダーク」「ヒーロー」という言葉を込めました。
物語の途中で女生徒(ミズホ)が街で見かけた森口先生に声をかけるシーンがあります。ミズホは犯人A 修哉を気にかけていました。
ミズホは森口先生に訴えかけます。
「修哉は母親に認められたかったんです。
誰かに認められたかったんです。」
この言葉に森口先生は不気味な大笑いという形で応えます。口や声では笑っていますが、目が笑っていません。そんなことは娘を殺された言い訳にすらなりませんからね。
次の瞬間、「憎しみを憎しみで返しても何にもならない」と森口の婚約者のセリフがフラッシュバックします。
森口はミズホの言葉を笑い飛ばし「娘を殺された恨み、赦しません」と静かに返します。
そして森口はミズホに背を向けその場を去ります。
暗い夜道を歩く森口。その目から涙がこぼれ始めます。
この涙は復讐に対する揺らぎでしょう。
立ち止まり、膝から崩れ落ちボタボタと落ちる涙。
しかしその直後、冷静な表情に戻ると
「ばかばかしい」と言い放ち、立ち上がるのです。
僅か数十秒のシーンですが、この葛藤、揺らぎ、そして完全にダークサイドに堕ちてしまった森口悠子の決心のシーンに私も涙が止まりませんでした。
ミズホの話をキッカケに森口は修哉の弱みは母親であることを掴み、更なる復讐計画に出ます。
ここからクライマックスに向けて誰も幸せになれない、止められることのない復讐劇が始まるのです。
◆ まとめ
私なりに物語の「父性」と「母性」に注目して読み解いてみました。「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」は途中ミズホの言葉に、過去の婚約者の言葉に一瞬立ち止まりましたが復讐は止まる事はありませんでした。物語は恐ろしい結末を迎えますが、この先森口悠子さんの人生に幸せが見つかるように願って止みません。
罪の種
私も娘を奪われたら同じことをすると思う。
楽な死よりもその罪の重さを思い知らしめ地獄の底を這いずり回ってもらいたい。
ラストの爆破シーンだけ無駄に長すぎ。
でも、誰の罪なんだろう・・・
加害者も被害者な部分もあって、でも許されることではなくて、苦しい。
うおー!
友達から原作の小説を借りており、読まずに早半年。
Netflixでこの映画を発見し、先に見てやろと軽い気持ちで見始めた。
もう音響とか演出がすごい惹き込まれる!
1人ずつの告白で物語の空いた穴が埋まり、さらにその奥にある真理に導いてくれる感じが好きだ〜
メインの人で大口開けて笑うシーンが修也しかいなかった(のかな?)ため、滅多に笑っていなかった直君が愛美を投げる所や森口先生の笑顔がかなり怖かった。ヒィ!てなった。狂気の笑顔。特に直君のあの笑みよ...
後半、修也に情が入りかけて(オイ)おり、どうなるんだろうとソワソワしてたら、、森口先生が復讐一直線!って感じで動いており、「そうだった...最初から森口先生は復讐のために動いていたじゃないかー!修也がイケメンだからって!!騙されないぞ!」と目が覚めた笑
あとは、橋本愛がひたすら可愛く、岡田将生がカッコ良かったです。木村佳乃のママ役もよかった!原作も読むぞー!
苦しい・・・
冒頭から、暗い画面、暗いトーンで松たか子がボソボソ言い続け、一体いつになったら、スカッとするのだろうと、見てましたが、ずうーっと苦しかった。見終わって尚。そりゃ、たった一人の残された家族、最愛の娘が事故死ではなく、いたずらに殺されたとわかったら、復讐したいと思うだろう。ましてや、自分の生徒たちで、反省どころか、楽しんでいる節もある。こんなのにも少年法が適用されるのかと、実際の事件でも思う時がある。更生すれば良いのか、しかし、死者は戻ってこない。。この映画の見どころは復讐のエグさ。犯罪者二人だけでなく、周りの人を巻き込んだら、アウトだろう。意図していないが、生徒の女子は特に可哀相だ。後任の熱血教師も短絡的思考が仇となったが、この後、教師続けられないだろう。クラスの他の生徒も壊れているが、一生忘れないだろう。ラストの爆弾を母親の元へすり替えたのは、何となく分かってしまった。松たか子、この先どうするんだろ。一人では観たくないかもしれない。
暇つぶし
お盆休み中することもなかったので、暇つぶしに鑑賞
女性教師の娘が生徒2人に殺害されてしまったことから物語は始まります。
関係者それぞれの告白という形で物語は進行していき、思ってもいなかった方向から女性教師の復讐が始まる。
ここでも関与してくるのかというシーンが何個かあり驚きましたが、観終わった後に良くも悪くも印象に残るシーンがありませんでした。
なーんてね?
無垢な悪魔
驚いた。
最初の松さんの独白から最後まで釘付けだった。
はたして俺は、鑑賞中に息をしてたのだろうか?
正直…洒落じゃすまない。
俺らの時代は、洒落でも済ませるくらいに世間も自分達も緩かったし、境界線を共有してたと思う。
中学生の頃の思考まで遡るに、劇中の彼らの行動全てに合点がいく。行動やその結果は違えど、彼らの衝動には頷けるものばかりだ。
いったい今の子供達はどんな世の中を生きてるのだろうか?
俺らの時代は全て空想で完結してた。
手段も経費もないからだ。
それがどおだ?
この情報過多の時代。膨大な過去のデータは蓄積され統計的な予測が立てれてしまう。
その結果何が起こるのか。
確定された予測の裏付けだ。
「命」という未だそのシステムが解明されないものにまで、その結末が提示される。
時間という名前だけ割り振られた事象でさえ、その役割も分からぬままに断定できちゃう。
全てにおいて意味などないのでは?
そんな禅問答のよう苦悩にも「yes」と答える思想が氾濫してる。
…未知なるものは恐怖ではなく、置き去りにし捨て置けるモノなのだ。
呑気に生きてはいるが、恐ろしい世の中だ。
人を呪わば穴2つ、との諺がある。
今作では一体いくつの穴を産んだのだろうか?
娘が殺された。
ここに集約されるまでの出来事は、何も特異な事ばかりではない。当人達には大問題であるのに間違いはないが、それでも世間的に考えたら珍しい事ではないのだ。それらが集約され向かった矛先が「マナミ」だった。
もしも〇〇だったら…
この陰惨で残酷な事件は起こらなかったであろう。
各エピソードから見え隠れするのは「他人に対する敬意の欠如」だ。
自分以外の人間は、自分の為だけに存在する道具ではない。なぜそんな単純かつ明快な事が分からない社会になってしまったのか…。
イジメの根本にも、そんな身勝手な思考があるような気がしてならず、今作における殺人にも同様の発想を感じる。
そう思えば、随分と分厚いオブラートにくるんだなと思わなくもないが、行き着く先が復讐や殺害となれば、強烈なメッセージでもある。
作品自体は「告白」という題名を裏切る事なく、関係者各位の告白で構成される。
上手く出来てる。
それを表現するに照明で異空間を作ってみたり、HSで情感に訴えてみたり。
自分以外の人間の腹の内…表面からでは見破れない様々な感情がトグロを巻く。
突出した激情ではあるものの、そおいう側面は確かにあるのだと想像力を働かせるべきだろう。
殺して隠してはいても、その人にも感情はある。
自分の想像や予測を凌駕しする思いもよらない感情がある。
どんな人にも、だ。
少年法に守られたという世界観ではあるものの、このメッセージ自体はネットの匿名性にも転換はできる。
他人は自分のストレスの吐口ではないのだ。
とてつもなく残酷な因果応報を被る前に、懺悔するべきであると考える。
学校や思春期って環境は、本作にはとても重要で…同世代にはリアリズムを、大人達にはイマジネーションを抱かせてくれると思う。
様々な状況に転化する余白があるとでもいうのだろうか…最適な舞台装置だ。
橋本愛さんは、とてつもない鮮烈なデビューだったのだなあ。デビュー作ではないのかもしれないが、俺が認識したのは「寄生獣」からだったので、度肝を抜かれたわ。キャストは皆さま熱演かつ的確な演技で、監督の手腕も垣間見る。
復讐で口火を切った本作が更生で幕を閉じるのも、実に巧妙だ。
自分以外の命の輪郭。
それを実感するまでの代償はとてつもなく大きかった。いや、当たり前の事だ。代替えの品がない世界で唯一のモノなのだから本来価値など付けられないと思うのだ。
それを知る為に「先生」がした授業は強烈だった。
最後に投げかけた「更生」の言葉には、イジメる側の常套句である「冗談だよ」って台詞への断固たる否定を感じる。
本作「告白」のオチとしてこれ以上のモノはない。小説家・湊かなえさんの絶対領域とでもいうのだろうか…誰も踏み込めない聖域を感じた。
俺はこの台詞を聞いた時、肩の力が抜けたような気がした。まるで奈落の底で合わせ鏡を覗き込んでるような…そんな無限回廊に放り込まれた本作だったが、あの台詞を聞いた時、ああコレは小説だったのだとホッとしたのだ。
2度と観る事はないと思うが、どなた様も必ず1回は観る事を強く勧める作品であった。
全74件中、1~20件目を表示