劇場公開日 2010年6月5日

「またひとつ、垣根を越えた作品ができあがった」告白(2010) マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0またひとつ、垣根を越えた作品ができあがった

2010年6月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

「嫌われ松子の一生」や「パコと魔法の絵本」といった極彩色世界とは打って変わり、色があってなさそうな活気のない気だるい世界を表出している。これは中島哲也監督がこれまでの描写術を封印したわけではない。監督の感性で、物語が持つべき色を作り上げたら、こうなったというべきだろう。ある意味、ティム・バートンに通ずるところがある。作家と言える数少ない監督のひとりだと思う。
また、この監督はエンディングに決して潔さを求めない。フランス映画のような尻切れの結末ではないが、大団円にこだわらないところがある。原作に沿っているのかもしれないが、こういう監督の下地があると、ただの告白に終わらず、どこに着地するのか分からないサスペンス的な要素が増大する。
話の展開は、ほとんど松たか子のひとり芝居といってよく、とくに冒頭の告白シーンは、淡々とした長台詞ながら引き込まれる。この語りの間を使って、今の学校、学級崩壊の様子を見せつけるカメラと編集が巧い。
これまでも、愛する者を突然奪われた復讐劇はあったが、どちらかというと終盤に来て実行を回避するのが通例だ。それは倫理観からくるもので、観る側もそこに同情や共感を覚えたものだ。
そういう意味で、この作品には、ある種の驚きがある。むなしさを超えた驚きがある。凄い作品ができたものだ。

マスター@だんだん