劇場公開日 2010年6月12日

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「凝ってるなぁ…」サバイバル・オブ・ザ・デッド MASERATIさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5凝ってるなぁ…

2018年2月22日
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鑑賞方法:DVD/BD、映画館

前作、「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」で脇役として登場した人物にスポットを当てた本作は、ロメロ監督の過去作品からでは想像していなかった新たな展開を向かえた。安全だと噂される島にやって来た軍人数人が、その島で生活する人々を見つけると共に、驚愕の事実を知る。それは、「人とゾンビの共存」だ。
村人の一部がゾンビに仕事をさせようとするなど共存を目指す一方、ゾンビは生きるに値しないと考える村人が対立しており、それぞれのリーダー格の老人二人が特に深くまで溝が生じている。
ここでも相変わらず人同士の関係の構築における問題や、人間そのものの狂気を描いているのには変わりはない。
ロメロが長年発信し続けていた、「人間とゾンビ、どちらが怖いのか」という思いを本作に特に力を入れてきたという印象だ。その中でロメロはゾンビを倒すべきか、共存するべきかという境地に至ったのだろう。改めて、凄いなぁ…と思ってしまう。長い監督生活の中で、自身が最も多く描いてきたゾンビというものに、一種のけじめをつけたのだろうか。
かつて郵便配達員だったゾンビが、新聞紙などをポストに入れるなどの動作を繰り返すシーンがあるのだが、それはやはり「正常な頃の記憶がある」ということだ。リビングデッド=生ける屍というスタイルだったロメロのゾンビに、革新的な変化が訪れていた。作品もヘタに金をかけた「ランド・オブ・ザ・デッド」よりもテーマや雰囲気がとても素晴らしい。ロメロ作品はこうでなくては。ただ今回は新規のテーマが含まれたためか、詰め込みすぎな感じは否めない。メッセージ性が強すぎて、もともと感じるはずであった恐怖というものが残っていないようだ。前作と同じ不満が残るのには残念だった。ただし新たな境地に至ったロメロは永遠にその考えを巡らせるのだろう。満月を背景に、空になった銃を敵対しているリーダー格の老人二人が向けあい、引き金を何度も引き合う姿を観て何だかそんな思いが込み上げてきた。
ロメロよ。永遠に。

Mina