エリックを探してのレビュー・感想・評価
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Blue Suede Shoes
70年代にリリー・デヴァインと高校のダンス大会で運命的な出会いを果たしたエリック・ビショップ。しかし、彼のパニック障害により不本意ながらリリーの元を去ってしまい、以来30年間音信不通となっていた。二人の間にはサムという娘がいて、彼女を仲介して何とかヨリを戻そうとするのだが、鬱の症状も酷くなったとき、彼の前に憧れのサッカー選手エリック・カントナが現われた。
単純な中年男の再生物語と思いきや、エリックの息子たちがギャングと関わったために狙われてしまうという展開。人を撃った銃を隠し持ってるとして警察の突入だとか、どうなることやらといったシリアス部分もあり、サッカー好き郵便局員たちの日常も伝わってくる。
エルビス・プレスリーの「Blue Suede Shoes」が効果的に使われていることもあり、意外な作戦もさることながら、ラストシーンではニヤリとしてしまう。青の靴が欲しくなった。
劇中、マンチェスター・ユナイテッドでのカントナの気持ちいいゴールシーンがいくつも挿入されているし、「相手を驚かせるには、まず自分を驚かせる」という言葉が印象に残る。社会派作品のみならず、こうしたコメディタッチの映画も作れるとはケン・ローチ侮れない!
【うだつの上がらない人生を送っていた男がマンUのスーパースター、エリック・カントナ(本人)のアドバイスを受け、再生して行く姿を社会派の名匠、ケン・ローチ監督が描いたヒューマンコメディ。】
ー 何をやってもうまくいかず、不満だらけの日々を送る郵便配達員、エリック・ビショップ。そんな彼の前に、憧れの存在だったサッカー選手、エリック・カントナ(本人)が突然現れた。それ以来、カントナはエリックにさまざまなアドバイスを送るようになり…。ー
◆感想
・社会派の名匠、大のサッカー好きのケン・ローチ監督が手掛けたヒューマン・コメディ。
- こんな作品も手掛けていたとは・・。侮りがたし、ケン・ローチ監督。コメディ要素を塗しているが、キッチリと冴えない男の人生再生物語になっている。
・エリック・ビショップは30年前に恋仲になり結婚したリリーの前から突如、姿を消す。その理由が少し情けないのだが、要するに自分自身に自信がなかったのである。
その後、当然の如く、彼の人生は下降線を辿る。
- 逃げ癖の着いた人間は、余程の事がないと、元には戻らない・・。負け犬根性が沁みついてしまっているから・・。-
・そんなエリックの前に現れた彼が敬愛するサッカーの名選手エリック・カントナ(本人)。驚き、彼の数々のミラクルなサッカーシーンを興奮気味に語るエリック・ビショップ。
- 面白いのは、実際のエリック・カントナ(本人)のサッカーでの名シーンがそのまま使われている所である。-
・息子2人が、ギャングのザックの手下として、良いように使われ、元妻のリリーからも、当然男として認められないエリック・ビショップ。
だが、彼は憧れのスターである、エリック・カントナ(本人)のアドバイスに従い、徐々に男としての気概を思い出して行く。
<今作の白眉は、エリック・ビショップがカントナに”あんたの最高のシーンは・・”と様々なゴールシーンを語った際に、カントナが言った言葉である。
”点を入れるために、”仲間”にスルーパスを出した事だ・・。”
他にも、
”最も高貴な復讐は、赦す事”
”茨を制するには棘を制す” 等、名言が多数・・。
そして、ギャングのザックを息子2人から手を引かせるために、エリック・ビショップがサッカー仲間達と、ザックの邸宅にバス三台で乗り込み、行った事の爽快さ。
今作は、社会派の名匠で、大のサッカー好きのケン・ローチ監督が手掛けた粋過ぎるヒューマン・コメディである。>
自分は変えられる
looking for Eric( 2009) エリックを探して
監督:ケンローチ
サッカー好きな郵便配達員エリック ビーショップはどん底に落ちようとしている。でも、ある日マリファナを使っていると、幻覚でサッカーの巨匠エリック カントナーが目の前にいる。彼に、身も心も鍛えられ、ビーショップの人間性が変わっていく。
設定はありきたりだけど楽しめた。
コメディーと言っても自然な演技でのコメディーなので気分を落ち着けて観れました。
主人公の憧れのスターが空気のごとく現れてダメ親父に助言して成長してく物語はごくごく普通の物語なんだけど名優の演技やナチュラルなコメディーがとても作品を上品に仕上がってる感じ。観ててほのぼのするし映画の素晴らしさが伝わる映画でした。
あんまり期待してなかったので、余計にびっくり^^
〈 最高のプレーはシュートではなく、仲間を信じたパス 〉
〈 他人を驚かそうと思ったら、まず自分を驚かすこと 〉
エンドロールが流れ始めて小さく拍手、
客電が点灯してからも、しばらく小さく拍手。
前から3列目で鑑賞をしていたので、
帰ろうと後ろを振り返ると笑顔の桜が満開!
そのまま受付へ直行しパンフ熟読。
映画館貼紙情報ガン見、いつもの星5個満点コースを
たどったのち、次の映画館へと向かったのでした(笑顔)
道を歩きながら、感心と驚き!
感心:絶対クチコミで満席に近かったんだろうな!
驚き:まさか、あのケン・ローチ監督の作品だったとは!
ケン・ローチ監督というと、
社会派作品のイメージが非常に強いのですが、
まさか、このようなファンタジックなコメディーを創る人だとは思ってもみませんでした。
エリック・カントナという、
伝説的サッカー選手を使いながら
(実際に本人が出演しています。しかも、
本人からケン・ローチ監督に、製作オファーを出したそうです)、
彼を主人公の空想相手の人物とし、主人公は子供に相手にされず、
別れた妻にも嫌われ、自己嫌悪街道をまっしぐら。
そんな、こちらも、
エリックと言う名の主人公を、
空想のエリック・カントナが奮い立たせていく。
このときに、出てくる格言。
パンフ以外に、この格言集を
販売しても売れるんじゃないか!
そう感じさせるほど、含蓄のある言葉ばかりです。
ちなみに、この格言。エリック・カントナ、ご自身が
使われていたものだそうです。劇中にも登場し、エンドロールでも
登場したカモメの話は、皮肉たっぷりで、ニヤリと笑ってしまいました。
皆さんの笑顔が満開になったのは、
クライマックスからエンディングにかけての
話の進め方が、エリック・カントナのキラーパスかのごとく鋭く鮮やかだから。
ベタっちゃぁ、ベタなのですが、
まさに、笑いあり、涙あり、心ジーンありで、
スクリーンを見つめながら、無意識のうちに、
笑顔になっている自分が、そこにはおりました。
★彡 ★彡
いやぁ、本当に、観てよかったです。♪♪
一筋縄では、いかないようです
「麦の穂をゆらす風」などの作品で知られるケン・ローチ監督が、サッカー界のスーパースターであるエリック・カントナを起用したことで話題になった、コメディ作品。
これまで一貫して社会派と銘打たれる硬派な作品群を発表し、世界的に高い評価を獲得し続けてきたイギリス映画界の才気、ケン・ローチが初めて取り組むコメディ作品。この触れ込みを聞いただけでも、好奇心は抑えられなくなってしまう。
数年前に、同監督が発表した作品「やさしくキスをして」は初めて挑むラブストーリー。じっくりと作品に向き合ってみると、誠実な人間描写と冷酷な物語展開、そして望まれない結末と見事にこれまで培ってきた演出リズムを崩さないネガティブ空間が炸裂。
もしや、もしや本作も・・・と、若干の不安を抱きながらも観賞してみると、どうやら俗にいう「コメディ」のような台詞廻しから観客に笑いを強制する時間潰しの如き安っぽさに走らないだけの良心はあったようだ。そして、やはり一筋縄ではいかない創意工夫と魅力に溢れていた。
孤独、欺瞞、痛み。人間が生きる上で必ず向き合う「自らの弱さ」と「他人への恐れ」。陳腐な笑いの世界が敢えて避けようとする陰の要素を徹底的に掘り下げ、見つめ、誤魔化し切れない後ろ向きな感情を丁寧に描くことが、結果として共感、開放という形で観客を微笑みへと、幸せへと一気に突き上げていく事が出来ることを、作り方は理解した上で本作の制作に挑んでいる。
その場しのぎのジョークだけを並べ立てて、「私、コメディだって作れますのよ」と悦に入る映画監督が実際に存在し、見事にショービズ界から消えているという現実は確かに、ある。その中で、本作が映画界において高い注目を集めたのは興味深い。本当に人間を深く、深く洞察することが出来る人間こそ映画を作る力があることを強く観客に提示する、可能性の塊のような作品である。
エリック、家族のスーパースターになる!!
エリックにとってカントナは、成功者として人生の鏡であり“神”だ。カントナの言葉はまさに“神の声”である。天からとも言うべき助言によって、エリックは失った自信を取り戻していく。
エリックは身の回りに実在しそうな普通の男だ。老いて冴えなかった顔が少しずつ若返っていくエリックは、観ていて応援したくなる。
当然のごとく丸く収まりかけるのだが、ここで事件が起きる。そう簡単にはいかない社会の恒が、単純な話に捻りを加える。しかも一般ピープルには荷が重すぎる事件だ。これに片をつけない限り前に進まないのだから、観ている方はどうやって収拾をつけるのだろうと脳細胞総出で考えることになる。
赤信号、みんなで渡れば恐くない的な結末は、人間ひとりでいたらロクなことがない、仲間が必要だと教えてくれる。
そして華々しい選手生活を送ったカントナもまた、自身の好プレーより大事なのは、仲間の大切さ、仲間を信じる心の大切さであると説く。
エリックも仲間たちのおかげで、家族のスーパースターになる。主がスーパースターになるには家族のアシストが必要だ。
主役にも内緒で、サッカーのスーパースターが本人役で登場するところが面白かったです。
前作の移民問題を扱った『この自由な世界で』、そして各賞を総なめにした反戦映画『麦の穂を揺らす風』など、イギリスを越えて世界的な社会派作品の巨匠ケン・ローチ監督が、こんなハッピーエンドなコメディ作品を手掛けたことが驚きでした。
そしてもう一つの驚きは、本作で登場するユーロ・サッカーのスーパースター、エリック・カントナを誰が演じているのだろうか、なかなかいい演技じゃないのと見ていて、ラストのクレジットをびっくり、なんと本人が本人役で出演しているのです。
天才はサッカーだけでなく、演技をさせても上手なのでしょうか。それとも圧倒的なカリスマゆえに、普通に語っても絵になるのでしょうか。
とにかく、ユーロ・サッカーのファンだったら、あのカントナがカメオ出演でなく、フル出演していてるというだけで、びっくりして本作に興味を持つことでしょう。
しかし劇中では、カントナはあくまで主人公のエリックのイメージの産物として登場するだけです。でも、主人公のエリックにとって、本物のエリックと会って語り合って、色々アドバイスしてもらっていると感じていたのでした。カントナのイメージを借りたエリックの自己暗示は功を奏し、前半のダメダメ人間から、仲間の力も借りながら自分で逆境を切り開く、積極的な人間へ自己変革していったのでした。
それにしても、カントナの登場場面は要注目。ローチ監督のサプライズ作戦で、なんと主役のスティーヴにカントナ本人が出演することを内緒にしていたのです。本番の撮影が始まり、スティーヴがカントナの等身大のポスターに向かっている隙に、まさに本編通りに、カントナが彼の背後に立って話し始めたから、何も知らされてないスティーヴは、びっくり仰天!画面に出ている表情は、ガチなんですね。
本作は、サッカーをきっかけとしつつも、主人公が勇気をもって人生に立ち向かう様を描いた人間ドラマです。サッカーが今までにない形で、人々の絆をもたらし、人間ドラマに結びつけてしまう展開にしてしまう点については、試写会に来られたスポーツ評論家の二宮清純氏も、「こんな形で結びつくのか」と意外さを強調されておられました。
さてストーリーは、冒頭郵便局員をしている主人公のエリックの情けない姿が延々と綴られていきます。
エリックは、パニック症候群に悩んていましたが、元々は聡明な男。その病気のせいで人との関係をうまく築けないでいたのです。彼が取った対処方法はひたすら現実から目を逸らし、仲間とつるんでサッカーの試合を見に行き、呑んで過ごすだけ。
その結果、最初の結婚は、発作が起きて一方的に新妻リリーの元と誕生したばかりの赤ん坊も残して、失踪してしまったのです。以来25年間リリーへの未練をたらたら残しつつも、罪悪感から再開する勇気すら起こせずにいたのでした。
再婚後も酒の問題は深刻化していきました。再婚相手にはそれぞれに父親の違う息子が2人もいましたが、彼女は出て行き、彼はこの息子たちの面倒を見る羽目になります。ティーンエイジャーとなった彼らは、勝手に悪友たちを家に引き込み、やりたい放題。
エリックは、一人で切り盛りするには大きすぎる家に残され、混乱はさらなる混乱を生む。仕事に集中するには限界が近づいていたのでした。
転機は、エリックが心酔していたカントナが突如登場し、彼の相談相手となったことから。なんでカントナが登場するのかというともたぶん職場の同僚がイメージトレーニングの方法を彼にコーチした結果、一番強く心酔していたカントナがイメージとして浮かんできたのだろうと思います。
カントナに励まされたエリックは、リリーとの再会も果たして、次第に自分のこうしたいという意志通りの人生を送れるように変わっていくのです。
そんなエリックに試練が待ち構えていました。息子のライアンがギャング一味と関わったばかりに、殺人の濡れ衣を着せられてしまったのです。
勇敢にも、単身でエリックは、ギャングのボスに交渉にいくものの、猟犬に脅されて、しっぽを巻いて逃げ帰るのがオチでした。
ところが持つべき者は、友。職場の仲間たちがエリックの仇討ちに立ち上がります。職場でサッカー観戦があることを利用して、バス10台でギャングのボス宅へ乗り込んでいきます。
さあて、ここから彼らの抱腹絶倒の団体戦が、見物なんです。それは劇場でのお楽しみ。ちょっと考えられないリアクションでした。
誰にも相談出来ず、一見孤立したようなエリックでしたが、そんな彼でも誰かと一緒のほうが強くなれるのだということ。これは仲間と団結をする話なんですね。その絆の深さに監督の暖かい人間味を感じました。絆といえば、サッカーのサポーターがいい例でしょう。サッカーと職場での労働者の仲間意識、この二つの絆を見せられたような作品でした。
巨匠のコメディは重量級
ケン・ローチといえば、徹底したリアリズムや容赦ない社会批判など、鑑賞後に無傷ではいられない作品が多い。
そんなローチがコメディで新境地を開いたかと思え…やはりそこにも重量級のカウンターパンチが潜んでいた。
基本的にダメ男が主人公なのは変わらず。
だけど今回はその主人公ががんばるがんばる。
さすが巨匠、コメディといえど社会背景にも人物造形にもぬかりがないし、生ぬるさがない。
やはりここにもローチ節は健在。
見ていて気持ちがほっこりするのは異例だけど。
エリック・カントナが本人役で出演しているけど、彼がまたなかなかいい味出してます。
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