劇場公開日 2010年12月25日

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エリックを探して : 映画評論・批評

2010年12月21日更新

2010年12月25日よりBunkamraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー

これまでのケン・ローチ作品とは趣を異にするダメ中年男のハッピーな再生物語

ケン・ローチがファンタスティックなラブコメを撮るとは嬉しい驚き。彼の映画でこんなに笑ったのは初めてだ。「レイニング・ストーンズ」(93)でも、娘の聖餐式のドレスを買うために泥棒しまくるドジな父親に笑った記憶があるが、その笑いはあくまでも辛口。ローチ映画が主眼とするのは常に、下層階級の苦しい現実や移民の虐げられた状況だから、ユーモアも切なさと裏表。笑いながら泣きたくなることさえある。ところが今回はとてもハッピー。ダメ中年男と、彼を支える仕事仲間たちの男子会アホ噺に屈託なく笑い、チーム・プレーの効能でとてもいい気分になれる。

マンチェスターの郵便配達員エリックは、離婚した妻リリーと30年振りに会い、しょぼくれた自分と違って若々しく美しい彼女にショックを受け、落ち込んでしまう。そんな彼に活を入れるのが、エリックが神と崇拝するマンチェスター・ユナイテッドの元エース・ストライカー、エリック・カントナだ。エリックが息子のハッパを失敬してひとりぼやいている時に、彼にだけ見えるカントナが現れるという設定が愉快。カントナが話すサッカーの極意はシュートではなくパス。信頼出来る仲間との連携プレーにこそ価値があるというのだ。その言葉に背中を押されたエリックが、仕事仲間に協力を仰ぎ、頼りになる夫、強い父親を目指して自己改革に取り組む再生の物語だ。カントナのタフなキャラクターとエリック役スティーブ・エベッツのヨレヨレ感が絶妙にマッチして、禅問答みたいな掛けあいが楽しめる。サッカー好きのイギリス人気質がそこかしこに現れているのも嬉しい。

(森山京子)

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