「これぞ映画!冒頭とラスト必見!」シチリア!シチリア! 温故知新さんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ映画!冒頭とラスト必見!
『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品。シリアスな問題を描きながらも、監督の温かいまなざしが常に感じられる映画だった。
主人公のペッピーノの父、チッコ・トッレヌオヴァから、ペッピーノの息子、ピエトロまでの親子三代の50年間にわたる家族のドラマ。冒頭のシーンとラストシーンが圧巻。映画という表現の自由さを満喫できる。
ストーリーはネタバレにならないように、公式ホームページのイントロダクションを引用する。
<シチリアを愛し、シチリアに愛され、激動の時代を生き抜いた家族の物語>
豊かな自然にあふれたシチリアの町バーリアで、たくましく生きる牛飼いの一家。次男のペッピーノは、幼い頃から大人たちに交じって働き、学校に行く暇もなかったが、毎日が冒険だった。
やがて時代は第二次世界大戦に突入し、ペッピーノはそのつぶらな瞳で、激変する時代を見つめる。戦争は終わり、成長したペッピーノは、今度は自らの激動の人生へと分け入っていく。
希望に輝く瞳が美しいマンニーナとの許されぬ恋と駆け落ち、正義感に燃えて入った政治の世界、そこで見た世の中の闇、マフィアと結びついた権力との闘い、老いてゆく父との絆、子供たちへの愛──幸せな時も悲しみの日も、いつも抱きしめてくれるのは家族だった──。
パンフレットにある監督インタビューが良いガイドになった。
「この作品は、人の一生を追ったとてもリアリスティックな物語です。だから観客はどうしてもストーリーを追うことに集中してしまう。でも私は、それだけの要素で映画を観てもらいたくないという思いもありました。それがああいう詩的なショットの形となって表れたのです。ある意味息抜きというか、ほかの現実的な描写から観客をふっと解放するよぅな瞬間をもたらしたかったのです」
「時間の不在というものを描きたかったのです。たしかに50年にわたる歴史ではありますが、私にとってその時間の観念は、子供が煙草を買いに行く時間に等しい。つまり時間はないに等しいというのがこの映画で言わんとしている哲学です。1世紀などという時間はツバを吐くような瞬間で終わってしまうものですよ」