「“それでも暴力の連鎖は止まらない”」息もできない 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
“それでも暴力の連鎖は止まらない”
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“それでも暴力の連鎖は止まらない”
ここに最低の男が居る。
何かにつけて暴力で自分の存在を示す。
ここに悩める少女が居る。
どうにもならない現実に絶望している。
この2人が出会う。
男は悲しい過去の記憶から脱却しようとして、暴力的になってしまった。
少女は、そんな男の底辺に潜む優しさに惹かれたのか、男の一方的な誘いにしばしば応じる。
まるで傷付いた2羽の鳥が、お互いの傷を舐め合う様に。
映画は一見恋愛映画の様な体裁を装うが、本質的な物は全く違う。
「高校生か?」
主人公の男は時々そのセリフを吐く。
なぜなら、男は暴力に対しての“或る踏ん切り”を高校生の時に感じたから。
実はその時、或る人物を悲しみの底に突き落としていた事を本人は知らない。
幸せな家庭に憧れる2人。
男は恥ずかしがり屋の性格故に、自分だけでは無く姉の幸せも同時に企む。
少女はやっと見つけた生きがいに喜々としていた。
崩壊した家庭が、少しずつだが新しく再生しかけて動き出したその時…。そんな幸せな空気を、切り裂く様に鉄槌が振り下ろされる。まるで“あの時”の様に。
それを行う人物は“あの時”の家族の人間。
お互いの存在を対照的に捉え、更なる悲劇へと向かわせる。まるでシェークスピア悲劇を見ている様だった。何と言う恐ろしい作劇術か。
凄い監督が現れたものだ!
(2010年4月22日シネマライズ UP theater )
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