GANTZ PERFECT ANSWER : 映画評論・批評
2011年4月12日更新
2011年4月23日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
虚構の世界で生かされた者たちの最後のバトル
死の瞬間に召還されたバーチャルな世界で、邪悪な異形の生き物を倒す戦いを強いられる。そんな初期設定さえ受容できれば、前作は次第に生きる力が呼び覚まされる人間ドラマとして、あるいはバトルアクションとして、均衡を保った快作だった。完結篇は原作から遠く離れていく。敵の姿は人間となり、戦う者たちの謎を追うミステリーが進行し、共闘するはずの仲間は敵に回って、愛する者の命に関わるミッションまでもが下される。
ガンファイト×殺陣×ワイヤーワーク。CGと肉弾戦を融合させ、日本映画離れしたアクションは目を見張る。とりわけ地下鉄と市街地でのスピーディーなバトルは、物量も速度も申し分ない。しかし映画版の独自性にこだわり、見せ場を満載にした戦略は仇となった。多数のキャラクターの関係性は未消化のまま、設定の多すぎるアクションRPGと化していくのが残念だ。仮構された世界に裂け目が生じ、現実世界が侵蝕され混乱していくというプロットを中心に脚本を整理しなければ、この物語に没入することは難しい。
虚構の世界があればこそ生かされた者たちの運命――このモチーフが急速に色褪せて感じるのはやむを得まい。3・11以降、この国は異なるフェーズに移行してしまった。フィクションの中で世界の終末を仮想体験しなければ、生死を実感できなかった時代が終わりを告げている。それは、ファンタジーが過酷な現実の中で効力を失っていることを意味するのだろう。
(清水節)