GANTZのレビュー・感想・評価
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独特の世界観に消化不良になりつつも、ふたりの主演の体当たりな演技で楽しめた作品でした。
『GANTZ』とは、「必殺仕事人」にSFテイストを加えた「夜にみんなで集まって殺しに行く」物語。殺戮がミッション化されていることにおいて、『インシテミル』と似ているところがありました。ただこのミッションの特典は、賞金でなく、一度失った命を復活させることができることが特典。
そのためこのミッションの参加者は、全員死んでしまった人であり、本人の参加希望の有無に関係なく、メンバーが決められて強制参加させられるところが特徴です。本作の際立っているところは、徹底してミッションの世界観の説明を省いているところ。原作のファンでない人が見ると、『GANTZ』の参加メンバーが死んでいるのか、生きているのか、わざと分かりにくくしている描写にあります。
彼らは、事故や自殺で確実に死んだ記憶はあります。そしてミッション中も、肉体と思っていたものが消滅して、自由に空間を移動する体験を通して、自分はもうこの世の存在ではなくなってしまったことを実感するのです。しかし、ミッションが終了してしまった後では、普通に現実世界に戻っており、彼らの周りの人物は、彼らが死んでことすら知らないようなのです。では、ミッション中のバトルは幻想なのかというと、ちゃんと現実世界に投影されていて、バトルで派手に壊した建物が、事件となりテレビで報道されていたりします。
ミッションでは、謎の『星人』と闘うことになりますが、『星人』に倒されるとミッション参加者は死亡してしまいます。「一端死んだ人間が、死亡する」という『GANTZ』ならではの不可思議な設定は、原作のマニアでなければ、どうなっているか消化不良を起こしかねません。佐藤監督は、そんな事は百も承知とばかりに、「ミッション参加者が生きていた現実世界」と「死亡後の“現実世界”」を全く同質に描きます。また、ミッション中もミッション参加者以外の人が登場しない、箱庭のような夜の空間なんです。けれども『星人』が登場すること以外、現実世界と変わらない街角が描かれて、異次元の雰囲気は皆無です。
ミッションを主催する、『GANTZ』と呼ばれる黒い玉についても、それがなんなのか全く説明が為されません。これでは『2001年宇宙の旅』に登場するモノリスのようなもの。
このように徹底的に観客を突き放して、謎を謎のまま好奇心を刺激させていく手法の本作。際どいところで観客を画面につなぐ要素として、40億円の製作費を投入した大掛かりなアクションとミッション参加者がミッションに参加することで、心境を変えていく人間ドラマがきちんと描かれていることでしょう。『20世紀少年』では、登場人物が何のために闘っているのかよく分からないところがありました。本作では明確で主人公の玄野の気持ちに、凄く共感できると思います。
二宮と松山の共演が話題になっていますが、実際は圧倒的に二宮がメインで描かれていました。本作の物語の原点は、幼なじみだった玄野と加藤の関係にあります。いじめられっ子だった加藤を玄野がいつも守っていたこと。
次々に登場人物が殺されるミッションの中で、加藤が犠牲になった場合、玄野が星人を退治して溜まった復活ポイントを自分のために使うのか、加藤にために使うのか究極の選択を迫られていきそうな展開なのです。小学生以降会っていなかった二人でしたが、絆の深さを感じさせます。
大人になった玄野は、就職活動で何のために働くのかすら上手く語れない、生きる目的を見失った刹那な生き方を過ごしていました。けれども加藤に偶然再会し、ミッションに参加することで、親分肌が復活。加藤やメンバーたちの誰も死なせないように頑張るという、リーダとしての自覚が芽生えていったのです。
なよ~としてろくに『星人』を殺すこともできなかった玄野の成長していくところを二宮が巧みに演じています。きっと続編では、玄野の最終決断に涙する展開となっていくことでしょう。
一方の加藤のほうは、いじめられっ子だった過去を反省。強く逞しい青年に成長していました。いじめられっ子だった影響か、ミッション中も非暴力を貫こうとしますが、玄野のピンチには身を挺して闘うようになっていきます。
加藤を演じる松山の変身ぶりに驚きました。『ノルウエイの森』で見せたヤサ男ぶりは影を潜め、撮影のために鍛え上げたというマッチョな肉体が印象的でした。明かに胸板が厚く変身しています。
ところで、ちょっと可笑しいのが、戦闘結果に対する『GANTZ』のコメント表示。戦闘には関係ない参加メンバーの恋愛感情までコメントしちゃうところに笑ってしまいました。ところで、ピンチになっても必殺のZガンを発射しないのは何故でしょうね?
独特の世界観に消化不良になりつつも、ふたりの主演の体当たりな演技で楽しめた作品でした。一着50万円なりのバトルスーツは、凄く薄そうで寒かったでしょうね。その
夏は、加藤でなくても色っぽかったですぅ。
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