「物足りない」GANTZ DSWさんの映画レビュー(感想・評価)
物足りない
自分は「GANTZ」の原作を読んでいるので、劇中のイベントや台詞に関しても大体どこから引用されたのか解った。中々原作に忠実な部分は大まかに観ると多いのだが、問題は演出になってくるだろうと観る前から思っていた。
「GANTZ」が人気の理由はいくつかあるが、そのうち重要な二つはエロさとグロさだと思う。エロさとグロさは原作を知っている人ならワカルと思うが、やっぱり登場人物達の人間っぽさがあるから存在する要素だ。「GANTZ」の主人公・玄野計はそんな普通のエロい、無関心な、つまらない普通の人間だった。実写映画版では、高校生から就職活動中の学生ということになっている。彼の最初の台詞である、「私は人にはそれぞれ役目があると思います・・・」は映画のテーマの一つになっていて、普段の生活や某会社での面接では中々見出せない自分をGANTZの裏の世界で星人と戦いながら“それ”を見出して行く。
突然、GANTZに召喚され、星人との血みどろの戦闘に駆り出され、訳も解らず命を奪って行かなければ生き残れない状況に計や、そのキッカけを最初に作った加藤勝、そして風呂場で自殺して全裸のまま転送されてきた岸本恵らは困惑する。が、少しずつ戦闘に魅力を感じ始め、自分の中にある戦闘の才能が覚醒され始めているのを実感するのは計。彼はGANTZに呼ばれるのを楽しみ、戦闘に没頭していく。そして、彼が小学生の頃、幼なじみの勝をいじめっ子(強い者)から守っていた時のような皆に慕われる“ヒーロー”的な存在になっていく。こういう主人公のキャラクターアークは原作からよく移植されていた。
映画は全体的に暗く、夜のシーンが特に多い。戦闘シーンはすべて夜起っている。最初はネギ星人、そして田中星人におこりんぼう星人。この三敵キャラはよくできてたと思う。ネギ星人の特殊メイクは非常によくできてた。ネギ持って走ってたのも原作に忠実でウケるw 田中聖人のロボットの動きは逆に愛敬を感じたw 顔の表情も面白い。でも、パンチ攻撃は猫パンチみたいで迫力に欠けていて、それに翻弄される登場人物達に危機感を感じなかった。それに田中星人って口から出したのって衝撃波??? 原作ではそれによって破壊というよりは、受けた被害者は両目吹き飛んで耳の鼓膜も破れたりだった。そういう描写もない。後の描写はあるけど、両目が吹き飛ぶその過程の描写はなかった。GANTZの原作が見せるグロさは、後の描写より、その過程を忠実に描くところだ。それが映画版にはなかった。そもそもせめてPG15か、R18にしてもうちょっと大人向けのアクション映画にするべきだったと思う。原作自体がもうちょっと大人向けになっている。映画版もそれは守るべきだった。そうじゃないとGANTZの魅力をフルに生かしきることはできない。ここは残念に思う。
演出。生温い。全員俳優さんは演技派を用意しているのにもかかわらず、みんな下手に見えたのはなぜだろう。二宮君と松山ケンイチ。アクション映画主演っていうガラじゃないからだろうと思う。違和感があった。この作品、岸本恵役の夏菜さんと西丈一郎役の本郷奏多以外はミスキャストだと思う。唯一彼らだけがそれぞれの役でいる感じがした。この映画に本物の玄野計と加藤勝はいない気がしてならなかった。
カメラワークや照明は頑張っていたと思う。夜というGANTZのムードに相応しい雰囲気をちゃんと作れていたし、カメラワークも不可思議なものはなかった。けど、もうちょっとワイドに撮って、見せれるところは魅せて欲しかった。(個人的には2:35:1で見せて欲しかった。こういうアクション映画にはビスタよりシネスコがお似合いだろう。)
CGIはよく出来ていた。といっても、多分夜の暗さにCGIの悪いところは補ってもらっていたと思う。おこりんぼう星人はよかった。迫力はよく出てたと思う。
あとこの映画で嫌だったのは二つ:全体的にペースがドラマチックで遅いところ。日本らしさとアクション・スリラーの要素を見せつつも2時間以上の作品を1時間40分ぐらいに収めれたと思う。残念。あともう一つはエンディング。なぜか二宮君がカメラ目線で「行こう!」って。。。非常にいらない。なんか演出に古さを感じた。ハリウッドでも滅多にやらないのに。それなしで、もっといいエンディングはあったはず。エンディング後も裏エンディングと二部目「GANTZ PERFECT ANSWER」の予告が流れていた。「DEATH NOTE」二部作と同じみたいで、GANTZ二部作目はオリジナルな展開になるようだ。まだ原作は続いているし、ありえない展開になってきているから映像化はせずにオリジナルの終わり方をするんだろうなぁと思っていたけどやはりそうだった。二部目は内容はよくわかりません。予告から何が起きているのか理解できなかった。逆にどう終えるのか見てみたいです。次は4月か。。。
最初に
自分はまだ映画版GANTZを見ていません。
アニメ、マンガは全て見ています。
GANTZのファンです。
レビュー全般、とても参考になりました。
>そうじゃないとGANTZの魅力をフルに生かしきることはできない。
しかしこの意見にいたるまでの感想には共感できませんでした。
あくまでエロ、グロはGANTZを印象ずける(まぁ奥先生の趣味かもしれませんが、、)表現方法の1つであり人間が残酷な状態になる様は拒絶反応をおこすのが一般の人の精神状態だと思います。(ただし原作ファンの自分は忠実に再現してもらってもまったく問題はありませんが)
>アクション映画主演っていうガラじゃないからだろうと思う。違和感があった。
GANTZは一般人が戦いをしいられる作品。
アクションが上手いよりGANTZの装備によりぎこちなくても何故か勝てれるという方が良いと思うので良いのではないかと、それより現在知名度がありスタイル、実際の性格などを考えると非常に近いキャスティングだと思います。
最後に
レビューを読んで非常に映画版もこの目で見たくなりました。
ありがとう。