「砂埃の向こうに横たわる現実が鉛のように重い」すべて彼女のために よねさんの映画レビュー(感想・評価)
砂埃の向こうに横たわる現実が鉛のように重い
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上司を殺害した容疑で逮捕された妻は獄中で心が折れてしまい持病の治療継続を拒否する。妻を救うには脱獄以外に手段がないと覚悟した夫は淡々と準備を進めるが、妻が別の刑務所に移送されることが知らされ事態は急激に暗転する。
妻が本当に無実であるかどうかは客観的には解らない。恐らく主人公以外は誰も信じていない。
妻のために全てを投げ打つ決意をした主人公が弟や父母と交わす断片的な会話、もぬけの殻のリビング、壁一面に書き殴られた脱獄計画が主人公の狂気を帯びた鋼の決意を炙り出す。どこにもカタルシスがなく、砂埃の向こうに横たわる現実が鉛のように重い。
フランス映画界では思春期に香港ノワールを観てきた世代が台頭してきてるのかと思ったら、監督、脚本のフレッド・カヴァイエは1967年生まれの同世代。ダイアン・クルーガーがアホみたいに美しくセクシーなのも印象的でした。
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