「作り手の楽しさが伝わる」SP 野望篇 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
作り手の楽しさが伝わる
TV版は見ていない。出演者の顔ぶれにつられて観に行った。
岡田准一扮するSP井上が、危険を察知する能力“シンクロ”や、一瞬で物事を映像として記憶する“フォトグラフィック・メモリー”などの特殊能力を持つことなど、まったく知らなかった。というか完全に予想外。そんな予備知識のない人に対し、丁寧な解説は一切ない。映画初監督の波多野貴文と脚本の金城一紀がとった手段は、冒頭のイベントに於けるテロ事件で、そのすべてを“見せる”だった。井上の能力はもちろん、彼らの班の人間関係もほぼ理解できる。一見、荒っぽいように見えるが、映画を観る側を信頼したスマートな切り出しと言える。くどい台詞やスーパーによる解説なんていうのは、観客の理解能力を信用していないか、自らの映像に含まれた情報量に自信がないかどちらかだ。
冒頭の追跡劇20分は、波多野監督もアクション監督も楽しかったことだろう。日本の映画で、これだけ物量を消耗したアクションはそうそう撮れる機会はない。
岡田准一もアクション・スターとして境地を開いた。もともとこのひとは若手の中でも幅広い役が演じられる逸材だ。
後半は、井上ただひとりをターゲットにしたテロや、政府高官をとりまく警備のずさんさなど、首をひねるところはある。それでも無駄に時間を稼がず90分そこそこにまとめたあたり、予算と時間を使ったA的B級作品が作れるようになったことは邦画界にとって喜ばしい。
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