「宙ぶらりん」マイレージ、マイライフ ぽよのすけさんの映画レビュー(感想・評価)
宙ぶらりん
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観終わったあとの感情は、「スッキリ」ではなく、「もやもや」。でもそれが、この映画の魅力であり、正解だとも思えた。
主人公・ライアンの仕事は、企業の代わりに人をクビにする「解雇通告人」。まるで日本の退職代行の逆バージョンのような仕事に、最初から胸が苦しくなった。知らなかったけど実際アメリカにはあるんだってねこういう仕事。伝える側も、伝えられる側も、どちらにとってもあまりに酷で、メンタル的に限界の世界。
そんな非情な仕事の中で、ナタリーやアレックスとの出会いによって、少しずつ心を開いていくライアンに希望を感じていた。けれど、物語後半で明かされるアレックスにパートナーがいるという事実はあまりに残酷で、「やっとつかんだかもしれない温もり」が一瞬で消えてしまう。
目標だった1000万マイルを達成しても、それはもう栄光ではなく、ただの“孤独の象徴”に見えてしまった。
どこにも着地せず、誰とも繋がらず、ただ空に漂い続ける——まさにタイトルの「Up in the Air(宙ぶらりん)」が、彼の人生そのものだったと気づかされる。
綺麗事では終わらない。それでも「これが彼の人生なんだ」と納得せざるを得ないラスト。苦くて、切なくて、だけど忘れられない。観た人の心にずっと残るような映画だった。
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