劇場公開日 2010年5月22日

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「○○ポとお下劣な台詞が飛び交うけど、中身は『今度は愛妻家』的な喪失ラブストーリーでした。」パーマネント野ばら 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0○○ポとお下劣な台詞が飛び交うけど、中身は『今度は愛妻家』的な喪失ラブストーリーでした。

2010年3月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 「パーマネント野ばら」は、マンガ家の西原理恵子が月刊誌「新潮45」に連載していたマンガが原作。娘を連れて実家の田舎町に出戻ったなおこは、母のまさ子が切り盛りしているパーマ店「パーマネント野ばら」の手伝いをしていた。なおこの同級生みっちゃんやともちゃんら町の女たちは、町に1軒しかないパーマ店に足を運び、小さなうそをスパイスにした悲喜こもごもの恋愛談議に花を咲かせるのでした。
 そんな女たちの“ザンゲ話”を聞いているなおこも、高校教師のカシマと恋をします。お互いを優しく思い合っている2人だったが、その恋にも思わぬ秘密が隠されていたというラブストーリー。

 なおことカシマの恋にどこか現実感がなく、突如カシマが消えてしまう事情は、『今度は愛妻家』と同じ。こう書けば、そうなのかとほぼ気付くことでしょう。本作もドンデン返しのある作品でした。
 ただなおことカシマの恋に馴れ初めが全くないので、どうしても観客は取り残されてしまいます。たぶんこの話で共感するのは難しいのではないでしょうか。
 そしてラストでは、いきなりさらりと終わってしまうので、物足りなさを感じました。 あのなおこ肩の傷は、何だったのでしょうね?

 ほぼ全編を原作者の故郷である高知県で撮影し、全キャストが高知弁に挑戦しています。ただ録音がオフ気味で聞き取れない上に、方便も重なって、四国出身の小地蔵でも、台詞がよく分からないシーンが多々ありました。
 それと土佐の女の「はちきん」ぶりが凄いのです。つまり陽気さや勝ち気さで、怒濤のようにはじけているのですよ(^_^;)おっとりした愛媛県人とは天地の差があるくらいの違いを、本籍宇和島市の小地蔵は感じてしまいました。
 旦那や恋人を蹴り倒すなんて朝飯前。みっちゃんなんて内縁の夫を嫉妬のあまりひき殺す寸前までやらかしたのです。原作者にいえば、みっちゃんは「はちきん」の代表格なんだそうです。嫌われ松子ですら、卒倒するのではないかという強烈なキャラでした。
 演じているのが小池栄子であることすら信じがたいほどの、役作りでした。龍馬ブームで湧いている昨今。きっと高知県人の見方が変わってしまう作品でしょう。
 小池栄子ばかりでなく、夏木マリが演じている母のまさ子や池脇千鶴が演じている親友のともちゃんら出演陣が、過酷と言えるほど強烈な個性を持つキャラを体当たりで演じているのが特徴の作品でした。

 そんな濃いキャラに囲まれた中で、主人公のなおこだけは、とても可憐で魅力的に描かれています。菅野美穂は、「切ない恋を秘めた女」を演じるとぴったりですね。

 『クヒオ大佐』が面白かっただけに期待してみていたのです。でもこの手の濃いキャラの作品を撮らせたら、中島哲也監督がやはり上手いなと思いました。

 ところで、本作は登場する女性達が、尽く男運が悪く、死別もしくは浮気かDVか博打で離婚に追い込まれています。ほのぼのと描きつつシュールなんです。
 ハッピーエンドにならない理由は、原作者の生い立ちにが深く投影されています。なおこやみっちゃんやともちゃんはみんな主人公の分身だったのでした

 西原は、母の実家である漁師の家で長女として生まれました。兄弟は兄がひとり。3歳の時にアルコール依存症の実父と死に別れています。母は再婚し、義父に溺愛されて育つというところでは、なおこの家庭事情と同じです。
 女子高在学中に飲酒によって退学処分を受け、その処分を巡り学校側を訴えています。 そんな破天荒な生き方を綴った部分が「無頼派」と評される一方で、叙情的な描写の二面性があると言われています。
 ともちゃんと似たところでは、夫だった鴨志田穣とそっくり。夫とは、アルコール依存症による暴言・器物破損等で精神病棟への入退院を繰り返し、2003年に離婚、腎臓癌腫)のため42歳で死去しています。
 そんな体験が、そのまま本作で表現されたものでしょう。
 最後に、なおこが一人娘に優しく声をかけられるところで、ホッとさせられました。

●「パーマネント野ばら」完成披露
 なんとラッキーなことに、完成披露付きの試写会でした。菅野美穂が登場すると、女性の観客からカワイイ~とため息。一発で観客の心を釘付けにしてしまう、魅力的な女優さんでした。
 その他小池栄子、池脇千鶴と吉田監督が登場。途中からは原作者の西原理恵子も合流するなど豪華なお披露目となりました。

 殆ど高知ロケで撮影した作品だったため、出演者は合宿のような状態で過ごしたとか。終わった後も何となく集まって食事をしたり、ガールズトークを楽しんだりしていたので、役作りの上でも役立つコミュニケーションが深められたそうです。

 菅野は、小池の袖を引っ張りながら「先に撮影が終わったみんなが東京に帰っていくのがすごく寂しくて引き留めました」と結構淋しがりやの一面を覗かせながら、ロケの模様を語ってくれました。

 一方小池は、地元のグルメを堪能したことを報告。「地元の方が料理を作ってくれて、キビナゴやカツオは毎日のように食べてました。」とのこと。キビナゴは劇中にも沢山登場します。
 食事は、ロケ弁の他、地元の人が沢山差し入れを持ってくるので、食べるのが大変だったようです。なかでも、ロケ地宿毛のイタリアンレストラン(ポモドーロ?)では、シェフが裏メニューとして、特別にカツオバーガーを差し入れしてくれたそうです。どんな味なんでしょうね。
 この店は、みんなのお気に入りで、ロケ中にはよく行ったところ。そんな食事の話から、和気あいあいとした撮影の雰囲気が浮かんでくるようでした。

 花束を持って駆け付けた原作者の西原は、「アニメ化とかもうれしかったけど、今回が一番うれしかった。マンガを描いていてよかった。自分の作品よりよくなっている。」と大感激。
 ただ劇中に何度も野バラに集まってくる常連客のオールド・ガールズトークのなかで、○○ポ、チ○○、○ン○と何度も過激な言葉を女優さんに言わせちゃって本当に下品ですいませんと頭を下げぱっなしでした。男はどう見てくれるのか心配だとも。
 でも、録音状態が悪くて台詞が聞き取りにくかったので、そんなに卑猥に思えなかったから大丈夫ですよ(^_^;)
 西原がいうには、女達が固まっているときには、こんな一面もさらけ出すのだとか。ホントですか?
 その西原の知り合いのくせのあるオバサン連中もみんな泣いていたそうです。2回試写に行って2回とも泣いたという原作者も折り紙入りの作品となりました。

流山の小地蔵