犬と猫と人間とのレビュー・感想・評価
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日本はペット大国だが、ペット天国ではない。
これは深く考えさせられるドキュメンタリーですね。
日本はペット大国では在るが、ペット天国では無い。いや寧ろペット地獄の国だ!
日本国内に於いて、行政施設等で処分される犬と猫の総数は、1年間で実に35万頭に達すると言う。つまりは、1日辺りにして1,000頭の犬と猫が殺処分となっているのだ。
その殆どが人間の勝手極まる“行為”によってで有るのは紛れも無い事実なのが悲しい。
飼い主に裏切られた犬や猫達が果たしてどうなってしまうのか?を今こそみんなで考える時が来ている。
捨てられた犬や猫はみな人間不振等に陥って、なかなか人間の言う事を聞いてはくれない。だから例え里親が見つかったとしても、また施設に返され結局殺処分の対象になってしまう…。
作品中には、“しろえもん”とゆう犬が印象的に扱われているが、しろえもんの例はあくまでもまだ恵まれている方だ。
ドッグトレーナーが来ては彼を調教する。
しかし頭の良いしろえもんは、調教の間だけ人間に従順にはなるが問題の解決にはならない。
映画の中では色々なトレーナーがやって来るが、それぞれに持ち味が有る様な気がする。
映画では後から来たトレーナーの方が良い…雰囲気に見えるが、これ自体は何とも言えないんじゃないだろうか?
何だか後出しジャンケンを見る様では有った。
その様に時々だが、ドキュメンタリーで在りながらも、どこか一方的な意見の偏りになりそうな時が気にはなった。
捨てる側の意見等は論外だが、(映画の中ではやむにやまれず施設に預ける人しか出て来ないから仕方が無いと言える)住民の中には動物嫌いの人だって存在する訳で…去勢して欲しいと(主にノラ猫が増えすぎて困ってしまい)施設に訴える一般市民の意見等も取り入れては?と思う時も有った。
一生懸命育てている人は確かに大変だろうなあ?とは思うが、反面その為に増え続けてしまう現実。
勿論捨てる人間が一番悪いのだけれど…。
マスコミや、一部の動物愛護団体を名乗るお金目当ての偽団体にも責任の一部は有る。
あのアイドル犬となった“崖っぷち犬”。
あの犬が引き取られたその施設の中では、あの“お祭り騒ぎ”の裏側で一体何が有ったのか…カメラは余すところ無く捉えている。モニターに映った犬達の姿を見ると本当にやるせない。
山梨県に存在する(テレビで何度か観た事が有る)犬捨て場こそは、日本のペット地獄の本質を見るようだ。
映画はその対比として、動物愛護の本場イギリスの現実を映す。
悲しいかな日本は足元にも及ばないのが現実なのだ。
個人的に映画の中で1番衝撃的だったのは、去勢手術をする場面でした。
ひょっとしたら明日にでも…。
淡々と手術をこなす職員の女性の意見が忘れられない。
「切ないですよね!なるべく見ない様にしています…どれが良いってのは無いんでしょうが…なるべく殺されない数が増えない様に…」と語る。
忘れもしない19××年9月1日。
始業式の帰りに突然学校近くの家で、おばさん4〜5人に呼び止められた。
「おにいちゃん!ここに捨て猫がいるんだけど、引き取ってくれるでしょう!」
一方的だった。生まれたばかりでまだ眼も開かない黒い猫。私はまだ八歳か九歳の秋だった。
とっても人懐っこく、元気の良い子猫だったが、僅か2週間で天国に行った。不慮の事故だった。
あの時程悲しい思いをした事が無い。どれだけ泣き続けたか解らない。
眼の前で苦しがり、呻き声をあげながら子猫は死んで行った。人も動物もやがては死んで行くのを実感した日だったのを覚えている。当時病に伏せていた祖父は、「俺の代わりに死んで行ったんだな…」と、ぽつりと呟いた。
あの時の悲しさから、ペットを飼う気には未だになれない。いや本音を言えば、あの時からず〜っとペットを飼いたくてしかたがなかったのですが…。
犬は人間にはすこぶる従順だし、猫は自由奔放で実に可愛い。
この映画が多くの人にとって、人間とペットの在り方を考えるきっかけになって欲しいと切に思います。
(2009年10月10日ユーロスペース/シアター2)
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