「運命の相手?」(500)日のサマー sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
運命の相手?
運命の相手との真実の愛を信じるトムと、運命も愛も信じないサマー。
これは正反対の考えを持った二人が出会ってからの500日間の物語。
サマーはかなり自由奔放な性格で、なかなか男性からは共感されにくい人物かもしれない。 しかしトムが一目惚れしたのが納得出来るくらいチャーミングだ。
トムはサマーに対して自分が恋人であるという証が欲しい。
しかしサマーは彼と手を繋ぎながらショールームでデートをするしセックスもするけれど、彼とは友達関係であることを主張し続ける。
大抵の男性は発展の可能性のないあやふやな関係に満足はしないだろう。
はじめはサマーの仕草のすべてが愛おしく思えたトムだったが、次第に自分の望むものを与えてくれないサマーに憎しみを覚えるようになる。
彼女は浮気をしたわけでも、彼を裏切ったわけでもないのだが。
恋は心を幸せな気持ちで満たしてくれるが、同時に毒薬でもある。
確かにこれこそ運命の相手と思えるような激しく心が揺れるような恋はある。
もうこの人以外には考えられないと思えるような相手に出会うことも。
しかしそれが真実の愛かどうかは別である。
相手に対する想いが強ければ強いほど、その反動も大きい。
シェイクスピアも程々の恋こそ長続きすると記しているように、実はあっさりと始まる恋の方が運命的なのかもしれない。
面白いのは物語の終盤でトムとサマーの考えが入れ替わることだ。
サマーとの恋愛に失敗したトムは愛も運命も信じられなくなる。
しかしふとしたきっかけで結婚の相手と出会ったサマーは、トムの言葉が正しかったことを知る。
サマーはトムに二人の出会いは運命的ではなかったのだと告げる。
が、おそらく別れることも含めて二人が出会ったのは偶然ではなく必然であり、運命的なものであったのだろう。
真実の愛がいつも刺激的であるとは限らない。
トムが新たな出会いをし、500日目から一日目に戻るラストが清々しかった。
トムとサマーの関係は特殊ではあるものの、恋という普遍的なものを見事に共感出来る形に描いた名作だと思う。