「お前の夢は何だ。」BECK 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
お前の夢は何だ。
最初に書いておくが、自分は
・原作漫画を1コマも読んだ事がない
・楽器の演奏技法に関する知識はほぼ皆無
・今まで観た堤幸彦の映画(『TRICK劇場版』『サイレン』『二十世紀少年』)は全部キライだ!
という人間。
もう『アンタなんでこの映画観たんだよ?』というレベルだが、ミーハーなんで話題作はやっぱり気になってしまう。それにまあ、いくら嫌いな監督の作品だからって、観てもないのに貶したり褒めたりするのもなんだかね。そんなこんなで観賞。
で、結論は……いやいや、観といて良かった!
とはいえ不満点は多いのでそちらから書きます。
漫画原作の映画は大抵そうだが、相変わらず漫画っぽい台詞や演出はいただけないし、外国人俳優はちっとも覇気が感じられない(まあこれも殆どの邦画に言えるが)。“BECK”の人気に火が点くまでの前半は活きが良くてかなりの快テンポだが、ロックフェス参加が決定してからクライマックスに至るまでの後半は主人公達が鬱々する様子が長々と続き、前半と比べて明らかに減速。
あとはやはりコユキの声の演出についてか。
「万人が振り返るような美声なんて現実にある訳無いし、しゃあないか……」と理解はするものの、やはりその演出が登場する度に座席からずり落ちそうに。
“声”ねぇ……音・画・テンポに対する解釈がある程度自由な“文章”や“漫画”といった表現ならともかく、映画では踏み込み辛い表現の領域なんだろうな。色々と工夫はしてたが、あの映像表現じゃ心は動かされない——「他に巧い見せ方があったか?」と言われたら何も言えないけど。
けどね、これだけ文句言ってもやっぱりこの映画が気に入ってる訳ですわ。
だってラストの『EVOLUTION』最高じゃないすか!
鬱々した空気を破壊するあの爆発的な高揚感!!
ひとつの夢に向かい、笑って怒って悩んで苦しんだ結果があのラストに集束されている。
音楽で無くても良いのだ。一度でも何か大きな夢を抱き、それに夢中になれた人なら分かってくれると思う。この映画には熱があるのだ。本気で熱くなれるものを近頃忘れ掛けている人間に、『お前の夢は何だ?』と自問自答させるだけの熱が。
最後にひとつ。
後半が長く感じたので『実際どのくらいの上映時間だったのかしら』と観賞後に調べて驚愕。144分もあったの、この映画!?
全体的にはかなりの快テンポだったのか……。監督、今回お疲れ様です。
<2010/9/5観賞>