劇場公開日 2009年8月29日

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クリーン : 映画評論・批評

2009年9月1日更新

2009年8月29日よりシアター・イメージフォーラムほかにてロードショー

世界は常に視界良好である。私たちが何かを諦めさえしなければ

ドラッグで夫が死に自分もドラッグから抜けられない仕事もない、義父母にあずけられた子供は母が父を殺したものだと思っている、その子供のために自分は何ができるか? そんな最悪の状況が、この映画の前提である。子供のためにすべてを諦めるべきだと、現実が語りかける。当然である。彼女もその要請に抗う術はない。術はないのだが、果たしてこれまでの人生を諦めることができるだろうか? 確かにそれまでの人生は誇れるものではない。その結果がこの現在なのだから。だがしかし、人は間違うものだ、迷った挙句最悪の道を歩むことだってある。だからその中にも最高の可能性が秘められてもいるはずだ。

最低最悪の状況の中にあって、しかしそこに潜む「最高」を探し続ける。そんな果てしない道のりこそ生きるということではないか。ミュージシャンであった死んだ夫と過ごした日々が、主人公にそっとそんなことを語りかけているのかもしれない。子供のためにすべてを諦めることではなく、それまでの人生をまっとうすることが子育てに繋がるそんな人生を探り続ける彼女の姿は痛々しくも晴れやかだ。そこから彼女の「歌」が生まれる。もちろんまたもや最悪の道を選ぶ可能性もそこには潜む。そうなったら泣けばいい。そこからまた一歩が始まるのだとこの映画は語る。世界は常に視界良好である。私たちが何かを諦めさえしなければ。

樋口泰人

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