「伝えるって、難しいね。」ちゃんと伝える mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
伝えるって、難しいね。
EXILEのAKIRA映画初主演作。最初タイトルを聞いたとき、『何の映画なのかな?どんな映画なのかな?』と思ってしまいましたが、映画を観るとその意味が“ちゃんと”伝わってきましたよ。
ストーリーだけ読みますと末期ガンもので、しかも親子でW(ダブル)末期ガン患者になってしまうという、この上なく重い設定なのですが、この映画はそういった重さを必要以上に感じさせず、むしろ淡々とストーリーが進んで行きます。予期された“お涙頂戴映画”“さあ、泣け!映画”にはなっておらず、むしろ観終わって清々しい気分にさえ、させてくれます。もちろん泣けるシーンはありますが、それが強調されていない演出に好感が持てました。園子温(←コレで“ソノシオン”と読むのだそうです。しかも本名!)監督の映画としても、これまでになく抑えた演出が為されているそうです(すみません。他の作品、吾輩未見です)。で、今回『AKIRAをEXILEから離れた普通の青年として描いてみたい』と思われたそうです。ですから、“EXILEの人=AKIRA初主演作”としては、驚くほど地味な映画でございます。「山形スクリーム」の時にも書きましたが、吾輩EXILEは知ってますが、メンバー個人個人については、まったく存じませんので、今回も『誰?この若手俳優さん』って、真剣に思ってました(だってEXILEのイメージとは違うし、「山形スクリーム」の時とも、また全然違うんやから!)。で、そのイメージとは相当に掛け離れた役柄を、AKIRAさんは無難に演じています。ただ少々台詞が棒読みかと…。あと、さすがEXILEのメンバーですね。非常に健康的!そうとても“末期ガン患者”には見えないの!!コレってどうなの?キャスティング的に。だから“W末期ガン”という設定は、この映画には必要だったのかなあ?と思っちゃいました。スタッフが医療現場にリサーチして、現実的にある話としてストーリーに盛り込まれたらしいのですが、単純に『息子が父を送る』というストーリーで、良かったんじゃないか?と感じてしまいました。この設定なら、もうチョット不健康でないとね~、AKIRA君!
キャスティング的には、伊藤歩さんがイイですね。彼女の“透明感を感じさせる存在感”は、映画の中で一服の清涼剤のように効いています。この伊藤さん演じる陽子と史郎の間で交わされる“大切な人に大事なこと、本当の思いをちゃんと伝えられているか?”というエピソードが、この映画のタイトルにもある“ちゃんと伝える”ことが如何に難しく、そして生きているうえで如何に大事かということを、観ている者に投げ掛けてきます。そりゃね、わかっていてもなかなか出来ないですよ。自分の思いをちゃんと伝えるってこと。つい『言わんでもわかるやろ?』みたいな風に、勝手に思い込んでしまいがちですが、やはりそれは、口に出してちゃんと伝えないといけないんですよね。吾輩、この映画を観てつくづく反省いたしました…。