白夜のレビュー・感想・評価
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どうして、そんな余計なことするの?
映画「白夜」(小林政広監督)から。
フランス・リヨンの赤い橋の上で出会った
見ず知らずの女、その女の不倫相手を捜し出して、
彼女がここで待ってると、伝えてくる・・と走り去る男。
そんな彼に、彼女が呟く。
「どうして、そんな余計なことするの?」
私がこの台詞を残そうと思ったのは、実は訳がある。
監督を始め、制作スタッフに訊き直したいから。
作品全体的に、そう呟きたい衝動にかられてしまった。
意識的なのか、撮影カメラの固定をしていないのか、画面が揺れる。
特に、リンゴを食べるシーンは、酔いそうになった。
また、時々挟まれるのモノクロームの画像の意味もわからない。
出演者は、驚くことに、本当に2人だけだったし
舞台の「ふたり芝居」を観ているようだった。
撮影の甘さに「経費が足りなかったんだな、きっと」と思わせる
そんな素人っぽさだけが、残った。
この作品の良さがわからない、のは、私だけだろうか。
だとしたら「う~ん、難しすぎる」
試写会で監督自身が難しい映画と語っていたが、難しいラブストーリーに挑戦する人は誰?
映画の感想日記を読み返していたら、ふと『白夜』と言う映画を観た日の事を急に思い出した。試写会で観た為に、小林監督の挨拶が有り、彼自身この映画は難しいので何度も観て下さいと言っていた。うぅ~む確かに難しいと言うか、これは普通にラヴストーリーなの?と?マークが脳内で爆発したのを思い出して可笑しくなった!
眞木大輔が演じる立夫と名乗る男は、顔に似合わず、人懐っこい性格で、リヨンで過ごす最後の日の思いでの為か、はたまた、海外にいるとやたらと同郷者、つまり日本人と言う接点だけで、友達の輪!を体験してみたくなるのは普通にある誰にでもよくある事で、この場合も例外無く立夫が旅の恥はかき捨て宜しく、朋子に声を掛けてしまう。(彼はその夜リヨンを発ちもう帰国予定でしょ?何故?とは横へ置いて)ヒロインと友達にならないと映画は成立しないので一応納得して事の成り行きを見守ると、吉瀬美智子演じる朋子は立夫を無視しているが、そのうちに話し始める、そして徐々に二人の心の距離は初対面1日目と言う事を忘れさせる様にぴったりと息が合って行き、終いには、淡い恋心?えぇ~と言う展開へと急発進してしまうプロセスが面白い!
まあ世の中、一目惚れと言うのもありで、こう言う恋があってもしょうがない!でもこの朋子そもそも、ある男と不倫関係にありその男を衝動的に追ってわざわざここフランス迄やって来たと言うのに、信じられない程の変わり身の速さには驚かされる!
う~む、どうもこの女性は恋する事、そのエネルギーで人生を生き延びるタイプか?これも中にはある・・・でも不倫にしても結局どこかで、自分が身勝手に、誰かを傷つけながら生きていると言う事を知りながらそれを止める事が出来ずに生きている女性なのだから、その自分を何処かで、自分自身否定し、変化を無意識に望んでいる筈だ。だからちょっと良さそう気に見える対象が目前に迫ると心変わりするのだ、哀し過ぎるがこれも人の性か・・・
そもそも不倫が成立するのは、妻帯者である男が他の女性とも関係を結ぶ訳だから初めから先が見えている、結果が予想出来ても止められない、人間の哀しい性を生きる人の心は中々満足を得られない故に、一目惚れが多いのか?不倫男もこのタイプだよな。
この映画は、不思議とこの立夫と朋子しか登場せず、カフェとホテルの従業員がエキストラ出演するのみである、レストランの他のお客さんも当然エキストラで、二人の人生に関わりは無い。ここからこの二人は過去の生き方が違う様に見えていても本質的に似た者同志で他の人間が目に入らないと言う事がデフォルメされていた。カット割も少なめで、長まわしで引きの撮影をしている、この異様に映る二人の住む世界観、これぞ今の日本人の心を閉ざして、光の無い世界で、まるで触角だけで、外界を弄りながら生きようとする
虫を見ている様な感覚に陥った。身近にやって来た誰かにようやっと少しだけ、心の扉を開ける今の人達の心が見え隠れする様だ。
そしてこの映画の冒頭では、街中の人々がイスラエルのガザ空爆への抗議デモをしているのだ。そんな現実の世界、世の中の動向に目を背けて自分の殻にはまり込んでしまい、外界と接触出来なくなった日本人と、今の日本の政治を皮肉っていると言う事にようやく辿り着く、全く不思議で、解り難い作品であったが、この映画は今の他人に対して心を閉ざして、積極的に人と繋がろうとしない世代の人間への、作者からの怒りのメッセージなのだろうとふっと映画を観た2日後位に気が付いたのだが、この映画実際には本当に何を描こうとしていたのか、私は監督の本心を知りたい。試写会でも、廻りの人達は意味が解らないとどよめいていたのだ。でもこの映画何故か、解らないと言いながら心に残る映画だった。
不思議な映画だ!それもきっと立夫の人の良さを演じた眞木大輔の魅力と、ひたすら世の暗さを一人で背負った様な朋子を怪演?した吉瀬美智子の二人の魅力による処が多い。
たまには、摩訶不思議な映画で、摩訶不思議な人間の性に触れてみるのも楽しいかも知れない。一緒に観た友人は映画の上映中95%は寝ていた。しかし新たなるチャレンジをして観る人はいないだろうか? 勇気ある映画ファンに期待したい!
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